グーグルが位置情報設定で消費者を欺いたとオーストラリアの裁判所が認定
オーストラリアでは、Google(グーグル)が過去に位置情報を収集していたことが問題となっていいる。同国の競争・消費者委員会(Competition and Consumer Commission、ACCC)が提起した訴訟では、Googleが位置情報の設定を二重にすることで消費者を欺いていたとする連邦裁判所の判決が下され、規制当局は「世界初の強制措置」と表現している。
この問題は2017年1月から2018年12月までのAndroidモバイルデバイスからGoogleが収集した個人の位置データに関連している。
ACCCによると裁判所は「消費者がAndroidデバイスの最初のセットアップで新しいGoogleアカウントを作成した際、Googleは『位置履歴』の設定はGoogleアカウントだけの設定であり、それによりGoogleが消費者の位置に関する個人を同定できるデータを収集し保持、利用するという、間違った表現をしている」と裁定した。
「実際には、『ウェブとアプリのアクティビティ』という別のGoogleアカウント設定をオンにすると、Googleが個人を特定できる位置情報を収集、保存、使用できるようになり、その設定はデフォルトでオンになっている」という。
裁判所はまた、消費者が同時期にAndroid端末の「ロケーション履歴」の設定にアクセスして同設定をオフにした際、「ウェブとアプリのアクティビティ」設定をオンのままにしておくと、Googleが個人を特定できる位置情報を引き続き収集、保存、使用することになることを伝えていなかったため、Googleが消費者に誤解を与えたと判断している。
「同様に、2017年3月9日から2018年11月29日の間に、消費者が後からAndroid端末の『ウェブとアプリのアクティビティ』設定にアクセスした際、Googleがその設定が個人の位置情報の収集に関連するものであることを知らせなかったため誤解を招いた」とACCCは付け加えている。
Googleの位置情報データ処理が欺瞞に満ちているという同様の苦情や、広告ターゲティング目的でウェブユーザーの位置情報を追跡し続けるために操作的な戦術を用いているという疑惑は、ヨーロッパの消費者保護団体によって何年も前から提起されていた。2020年2月、欧州における同社のデータ規制当局は、ついに調査を開始した。しかし、その調査は現在も継続中だ。
一方、ACCCは米国時間4月16日の連邦裁判所の判決を受けて「申告、罰金、出版命令、遵守命令」を求めると述べている。しかし、その執行活動の詳細は「後日」決定されると付け加えた。Googleに下る命令や罰金の金額などは、現状では明らかでない。
またGoogleには、今回の裁判所の裁定に対して上訴する可能性もある。
Googleは本日、同社の法的対応を見直し「上訴の可能性」を検討すると述べ、ACCCの申し立ての一部を却下したため(Googleが、消費者が位置情報データを収集および使用することを禁止できる方法、および個人の位置情報データがGoogleによって使用されていた目的について行った特定の声明に関連して)裁判所はACCCの訴訟に全面的に同意しなかったという事実を強調した。
Googleの声明は次のとおりだ。
裁判所は、ACCCの広範な主張の多くを却下した。我々は、残りの調査結果に同意せず、現在、上訴の可能性を含め、我々の選択肢を検討している。当社では、位置情報データに対して堅牢な制御を提供しており、より多くのことを常に行おうとしている。例えば最近、位置情報履歴の自動削除オプションを導入し、データの制御をさらに容易にしている。
位置設定の構成に関して何も間違ったことはしていない、とマウンテンビューは主張しており、またそれと同時に、ユーザーに提供するコントロールの改良を常に目指しているとも主張している。それにも関わらず、Googleの設定とデフォルトはそれでもなお、以前に規制当局との間で問題になったことがある。
2019年には、フランスのデータ監視当局CNILが、EUの一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)による透明性と同意に関する数多くの違反で5700万ドル(約62億円)の罰金を科した。それはGDPRの規制が発効されてから3年足らずの時点でGoogleに科せられた最大の罰金だが、もっと最近では、ユーザーを追跡するCookieを同意なく投下したとしてEUの別の法律でGoogleは1億2000万ドル(約131億円)を科せられた。
一方、オーストラリアは、Google(とFacebook)の市場における力を直接ターゲットにできる法制の年内成立を目指している。2021年2月に成立したニュースメディアの交渉コードを必須とする法律では、ジャーナリズムのコンテンツの再利用をめぐる大手プラットフォームとパブリッシャーの間の力の不均衡の解消を目指している。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Google、位置情報、プライバシー、オーストラリア
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)