マイクロソフトは顔認識技術を米麻薬取締局に販売しようとしていた

最近公表されたメールによると、Microsoft(マイクロソフト)は2017年に米麻薬取締局(Drug Enforcement Administration、DEA)に、同社の顔認識技術を販売しようとしていた。

米国自由人権協会(American Civil Liberties Union、ACLU)はそのメールを、10月に提訴した記録の公開をめぐる訴訟の過程で入手(PDF)した。その訴訟は、顔認識事業を取り巻くDEAの秘密主義に挑戦していた。ACLUは、メールをTechCrunchと共有した。

メールの日付は2017年9月から2018年12月までで、マイクロソフトがDEAの職員をバージニア州レストンのオフィスに秘かに招いて同社の顔認識技術をデモしたこと、のちにDEAがその技術を試験的に導入したことがわかる。

その頃、マイクロソフトの社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏は、顔認識の使用を対象とする政府の規制を公開の場で求めていた(マイクロソフトブログ記事)。

しかしメールはさらに、DEAがその技術の購入に関して懸念を表明したことを示している。DEAは、FBIによる顔認識の利用が政府の監視の目に止まり(GAO記事)批判を招いた1件を危惧していた。

批判者は以前から「顔を対照させるこの技術は米国人のプライバシーの権利を犯し、またその技術は有色人種に対する異様なほど大きな偏向を示している」と主張していた。しかし、警察や公共の場などで顔認識が広く利用されるようになったにもかかわらず、議会は適切なタイミングで規制を導入することができず、技術は規制も監督機関もないまま放置された。

しかし、George Floyd(ジョージ・フロイド)氏の死に続いて米国内と全世界で起こった抗議運動により事態は変化し、法の執行と人種による不公平に、あらためて人々の注意が集まった。

マイクロソフトの営業がメールで、DEAの職員を同社のバージニア州レストンのオフィスに招待して同社の顔認識技術をデモしようとしているメール(出典:ACLU)

マイクロソフトは先週、国の規制が整うまでは顔認識技術を警察に売らないと発表した。その前にAmazon(アマゾン)は顔認証技術を警察に売ることを1年間留保すると発表した。抑制の口火を切ったIBMは、もっと極端に顔認識事業から全面的に手を引くと発表した。一方で、マイクロソフトとアマゾンは「国の省庁やDEAのような機関には今後も売らない」とは言っていない

ACLUの主席弁護士であるNathan Freed Wessler(ネイサン・フリード・ウェスラー)氏は「ドラッグに対する人種差別的な戦いを率いる法執行機関に、マイクロソフトが危険な技術を売ろうとしただけでも十分に劣悪だが、今はもっとひどい。先週、顔監視技術を警察に売らないと遅まきながら約束したあとでさえ、同社はその技術をDEAのような国の機関に今後売るのか売らないのかを言おうとしない」と語る。

「米国の麻薬取締局の履歴を見れば、それだけでも厄介だが、もっとひどいのは、報道によると司法長官のBill Barr(ビル・バー)氏が司法省の監視権限を拡大しようとしていることだ。警察の虐待行為に抗議している人々を秘かに監視するなど司法の権力が濫用されるだろう」と同氏は付け加えた。

その後、一部の議員がDEAによる抗議者の秘かな監視を停止するよう要求(BuzzFeed News記事)したが、その権利は抗議活動が米国と世界に広がった6月初めに司法省が認めたもの(未訳記事)だ。

TechCrunchの質問に、DEAのスポークスパーソンであるMichael Miller(マイケル・ミラー)氏は回答を拒否した。マイクロソフトのスポークスパーソンは、コメントのリクエストに応じなかった。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa