AmazonはAppleのようになりたいのではない。Amazon.comのようになりたいのだ
499ドルの8.9インチ、LTE付きKindle HDの発表によって、Amazonは新iPadと同じ価格のデバイスを持つことになった。もちろん両者の容量、接続性、画面サイズは大きく異なっているが、消費者はこの二つを比較しないわけにはいかない。
しかし、多くの人々が語っているのとは裏腹に、Amazonはもう一つのAppleになろうとしているのではない。実際、Amazonはそのアイデンティティーに忠実であることによってハードウェアビジネスを進める独自の方法を見つけたのである。全速力で進める方法を。
その伝説的なLab126研究開発センターのウェブサイトには、203人分の求人が掲載されている。彼らはハードウェアを真剣に考えている、ただし彼ら独自の方向性で。
重要なのは使用回数。そうでなければ低価格に意味はない
ここ数年Amazonの戦略ははっきりしている。Kindle Eリーダー機の価格を下げはじめ、ついに99ドルというスイートスポットに到達して以来、Amazonはコンテンツを売るために、ハードウェアの販売助成を行っている。
当初は電子書籍だけだったが、今は映画やMP3もAmazon Prime定期購読や、従来からの単品購入によって提供している。価格を下げるためにAmazonは、全デバイスをロック画面の広告付き(婉曲に「スペシャル特典」と呼んでいるが)で販売した。
現在69ドルの入門機から499ドルのKindle HDまで、広告付きで売られている。ユーザーはゆっくりだが確実に、それらのロック画面の壁紙広告を受け入れ始めている。Amazonは、たとえ低価格のためであっても、ユーザーを煩わせすぎないよう注意する必要がある。
実際Amazonは優れたユーザー体験を育む必要がある。なぜならそれが会社にとって重要だからだ。もしKindle Fireの利用者が、購入後一月で使うのをやめてしまえば、それは会社とって賭に負けたことを意味する。
Amazonがハードウェア開発に多くの人材を雇用している理由はそれだ。彼らは顧客を魅するために優れたハードウェアが必要であり、さらに重要なのは、Amazonエコシステムの中に居続けさせることだ。最悪のシナリオは、Kindle Fire利用者たちが、Nexusタブレットの方が「ずっと」いいと感じてKindleを捨て始めることだ。
優れたデバイスを作ることは、今後数年にむけてのメーカーによる囲い込み効果のために重要である。しかし、Amazonの囲い込みはAppleやGoogleのそれとは大きく異なっている。
Amazonは新製品のヒントを与えることで興奮を作り出す。隠すことではなく
Appleは新製品について秘密主義が強いことで知られている。Apple社員でさえ、別のチームが何の仕事をしているのかわからないし、セキュリティー対策によって、Appleキャンパス内のビルディングへの立ち入りは驚異的に保護されている。
しかしAmazonのアプローチは違う。Amazon社員は技術系ブログに情報を送り込みすぎて楽しみを奪う傾向にあるが、AmazonはKindle Fire HDの発表数日前、非常に新奇な戦略を採用した。例えば彼らは、既存のKindle Fireは8月30日に売り切れたと宣言し、あらゆるテク系メディアの注目を集めた。彼らは誰にでもわかるように新機種がやってくることを伝えた。それは純粋な広報活動だった。なぜならメーカーが生産を止めないかぎりデバイスが売り切れることはないからだ。
これも興味深い行動だったのは、新しいKindleデバイスを載せたAmazonの広告を、記者会見の前日に公開したことだ。人々は新しいiPhoneやiPadについて発表の何ヶ月も前から噂をする。Amazonは同じような期待と興奮を求めることができない。
Appleと同じ戦略を採用して同じ結果を得られない代わりに、Amazonは自分たち独自の方法を見つけて成功している。新型Kindleのメディア露出は、MotorolaやNokiaのメディア露出よりはるかに重要だった。
DNAの違い:Amazonはハードウェアとコンテンツに対して独自のアプローチを持つ
他の会社と大きなスタイルの違いはAmazon CEOのJeff Bezosを見ればわかる。記者会見で彼は、Amazonがなぜ他の会社と大きく異なるかを誇示するよくできたプレゼンテーションを行った。彼はカリスマであると共に集中力のあるリーダーであり、発表する自社製品に誇りをもっている。BezosのAmazonに関する当初のアイディアが、世界中の本をインターネットを通じて売ることだったとすれば、彼がKindleデバイスのことも信じているのは明らかだ。
成功するテクノロジー企業には、他と一線を画す強力なアイデンティティーがある。 FacebookのハッカーカルチャーからAppleのテクノロジーとリベラルアーツの交差点まで。「一つお伝えしておくべくことは、われわれのアプローチは、われわれのアプローチであり、それを正しいアプローチだと主張するつもりもないことだ」とBezosがAllThingsDに語った。
Amazonは何よりもまず小売業であり、そのことをよくわかっている。例えば、Amazon Primeの翌日配達に映画のストリーミングをバンドルしたり、Kindleの広告をAmazon.comのあらゆる場所に配置して、ワンクリックでカートに追加できるようにしている。
ところが何か変わったことが起きた。同社のインフラストラクチャーが世界第10位の人気ウェブサイトを支える必要あることから、Amazonは世界有数の技術志向企業になってしまったのだ。Amazon Web Servicesによって、他のウェブサイトに対しても最も強力で最も利用されているプラットフォームを提供し始めた。Instagram、Netflix、Foursquare、Pinterest、Heroku、その他無数のサービスがこのプラットフォームに依存している。
頼りになるプラットフォームになることは、Amazonのコンテンツ戦略の背後にあるひらめきの一つだ。いくつもの店を組み合わせて利用者を喜ばせるGoogleのようなやり方ではなく、Amazonは、コンテンツを消費するさまざまな方法を持つ一貫したプラットフォームを作ろうとしている ― 定期購読、レンタル、Kindle Singles、Kindle Serials、等々。そして、そのゴールを信じている。彼らには、そのあらゆる場面に存在するためのリソースがある。Netflixとは違って。
人々はAmazonのデバイスをオペレーティングシステムやハードウェアが好きだから買うのではない。彼らがAmazonデバイスを買うのは、Amazonのコンテンツ・プラットフォームで映画を見たり本を読んだりする方がずっと簡単だからだ。そのための条件がいくつかある。ハードウェアは他のメーカーと同等レベルになければならない。Amazonはハードウェア価格を低く維持しつつ、多すぎる広告で利用者を煩わせてはならない。そして、Amazonは世界最高のコンテンツ・プラットフォームを作ることへの集中を続けなければならない。それが、AmazonのDNAは特別であり、他のタブレットやEリーダーのメーカー、特にAppleとは根本的に異なる理由だ。
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(翻訳:Nob Takahashi)


