クレイトン・クリステンセン:「破壊的イノベーションは職を生み出し、効率的イノベーションは職を奪う」
もし、クレイトン・クリステンセンの話を聞く機会があったら、 逃す手はない。クリステンセンはハーバードビジネススクール教授、著名な著作家、そしてイノベーションの専門家だが、おそらくもっとも知られているのは彼の著書『イノベーションのジレンマ』によってだろう。同書は多くの思想家やビジネスリーダーに深遠な影響を与えており、スティーブ・ジョブズもその一人だ。今日(米国時間10/9)サンフランシスコのBoxWorksカンファレンスで講演したクリステンセンは、特徴的な優しい語り口で、控えめで、ユーモアに溢れ、[ブロガー]Ron Millerをして「彼はビジネス研究のスティーブン・ライト」 と言わせ、そしてアンチAaron Levie[Box CEO]でもある。
彼の話は多岐にわたり、破壊的イノベーション、効率的マネージメント、製品開発、顧客とのコミュニケーションなどの理論に触れた。いくつかのハイライトおよび記憶に残る言葉は、基本的でありながら複雑なことの多い、企業と顧客との関係に関するものだった。当然のことだが、成長する製品を作る時、企業は膨大な時間とエネルギーとリソースを注ぎこんで顧客について知ろうとし、彼らの問題を解決するものを作ろうとする。
しかしクリステンセンは、多くの企業やスタートアップはここで間違いを起こすことが多いという。それは、一件直感に反するものだ。「顧客を理解することは誤った行動。それは複雑である」と彼は言い、顧客は企業が売れると思うものをめったに買わない、というピーター・ドラッカーの主張を引用した。
代わりに真に重要なのは、顧客が成し遂げようとしている仕事を理解することであり、起業家は、製品やサービスが満たす買い手のニーズを真に理解した時にのみ、事業や製品を最適化することができる。彼は、30年あまり続き、潰れてもおかしくなかった企業の一例としてIKEAを挙げた。しかし誰も彼らを模倣してモデルを改善できていない。それは、顧客がやりたい仕事を真に理解することに関係している、とクリステンセンは言う:「今日この部屋に家具を揃えたい」。ひとたびそれを理解すればそれは単純なことで、IKEAはそれを中心に店全体の流れと買い物体験を最適化した。
多くの初期段階製品は、時間とともに持ち上がる顧客ニーズを先取りしすぎている、と彼は言う。起業家や開発者は理想的な消費者やユースケースではなく、メインストリームをターゲットにデザインすべきだ。顧客と触れ合い、対話を持ち、彼らの問題を学ぶことによってのみ、デザインや製品開発を最適化することができる。「最高ではないが手頃な価格で有用な製品が市場を破壊する」とクリステンセンはBoxWorksの聴衆に伝えた。
さらに、成し遂げられるべきあらゆる仕事(そもそも会社が製品を作る理由)には、適切な体験を提供するために理解すべき社会的機能がある。製品はその性質上簡単にコピーできるが、仕事にまつわる体験と社会的側面をコピーするのはずっと難しい、と彼は言った。
クラウドコンピューティング時代にとって最大の問題の一つは、クラウドの能力があまりに高いため、実は誰も必要としていないアプリやツールを作ってしまう誘惑にかられることだ。そうではなく、デベロッパーは人々が成し遂げようとしている仕事のために開発する必要がある。クラウドの持つ真の破壊力は、中小企業が驚くほど簡単に自社の業務を安く効率的に遂行できるようになったことだと彼は言う。これはまた、彼をはじめとする多くの人たちが、モジュール方式がクラウドと業界を席巻すると予想している理由でもある。
問題は、現在テク業界に広がる効率の追求が、多くの人々の職を奪い、ごく僅かな人の財産を生み出していることだ。「破壊的イノベーションは職を生み出すが、効率的イノベーションは職を奪う」。IRR(内部収益率)やROE(資本収益率)などの指標は、破壊的イノベーションから利益を奪い、経営陣の目を本当に重要な投資からそらす結果を招く。
さらにクリステンセンは、ハーバードビジネススクールや同様の組織の将来に対する危惧について話した。今年、2年制のビジネススクールに応募した人数は22%減少した。その理由は、HBSその他のビジネススクールが証券会社やヘッジファンドなどでなければとても雇えないような高給取りばかり製造し、その結果こうした人材が一般企業には手が出なくなっているためだ。
事業会社は求人のためにHBSを訪れない、と彼は言う。代わりに彼らは自前の企業内大学を作り、将来のマネージャーや幹部を育成し、生徒たちを教室で思索にふけさせる代わりに日々の業務に没頭させる。その結果、彼らはビジネススクールを破壊しつつある。それは学界が仕事を成し遂げる方法ではなく理論を教えることに集中しているからだ。
破壊とイノベーションを促進するもっと良い方法があることに疑問はない。そしてトレンドは、シリコンバレーを離れる方向に動きつつある。スタートアップやアクセラレーターはアメリカ全土に出現し始めている。
あなたはどう思うだろうか。破壊的イノベーションは職を生み出し、効率的イノベーションは職を奪っているのだろうか。
写真提供:from Jon Morris((@Jon_Morris)
[原文へ]
(翻訳:Nob Takahashi)


