YouTubeがNewswireをスタート―ビデオの信頼性を専門家が検証して配信するニュースチャンネル

今日(米国時間6/18)、YouTubeはビデオ共有とジャーナリズムのあり方に新しい風を吹き込むべく3つの新サービスをスタートさせた。そのメインとなるのは事実だと検証ずみのビデオを配信するYouTube Newswireという新しいニュース・チャンネルだ。このチャンネルはYouTubeにアップロードされたビデオから報道する価値があるものを選び、ジャーナリストが事実性を検証するソーシャル通信社Storyfulとの提携によって生まれた。

YouTubeのブログ記事によると、2011年のエジプト革命の発端となったタハリール広場での抗議集会を機に、YouTubeはその前年からYouTubeビデオの事実検証と背景情報の収集を始めたStoryfulと提携するようになったという。Storyfulのチームはこれまでに10万本以上のYouTubeビデオを検証してきた。

GoogleのYouTubeとNews Corpの子会社、StoryfulはこれまでもCitizenTube、YouTube Politics、YouTube Human Rights Channelなどのチャンネルで提携している。

youtube-newswire

今回のYouTube Newswireでは、提携をさらに一歩進め、 そのビデオに関連ある情報に詳しい世界中のジャーナリストやビデオの目撃者に直接連絡を取って証言を求めることとしている。

Storyfulのファウンダー、イノベーション担当ディレクターのMark Littleは新サービスのスタートを告げる声明の中で「インターネット上のノイズはますます大量になっており、それにともなって適切なキュレーションの必要性もこれまでになく強まっている。われわれのチームは最良のソーシャル・ジャーナリズムを目指して献身的に努力していく」と 述べている。Littleによれば、Storyfulが2011年にYouTubeとの協力を始めたときには48時間分のビデオが毎分アップロードされていたが、現在は毎分300時間にもなっているという。.

YouTube Newswireは世界的なニュースだけでなく、ローカルニュースも扱う。またTwitterメール・ニュースレターでもビデオを配信する。テーマとしては最新ニュースの他に政治と天気が扱われる。

Storyfulは昨年FacebookがFB Newswireをローンチしたときに、Facebookとも同様の協力をしている。FB NewswireはFacebookに投稿された記事のうち、情報源に信頼がおけて社会的に価値が高いものを選んで掲載するキュレーション・ページだ。

Storyfulの重要な役割は、単に記事を選んで見やすく整理するだけではなく、信頼性を検証し他のニュースメディアやジャーナリストが安心して引用できるようにする点にある。ソーシャルネットワークが普及した後のいわゆるリアルタイム・ジャーナリズムの時代にはTwitter、Facebook、 YouTubeへの投稿がメディアやジャーナリストによって引用され、事実化どうか確認される前に瞬時にニュースとして世界に拡散してしまう。Storyfulは話題のビデオがインチキであることを何度も暴いてきた。 この中にはトワーキング・ダンスしている女性がロウソクの上に倒れて火に包まれるというビデオトリック撮影によるものだという検証も含まれる。

リアルタイムニュースメディアとしてYouTubeに最近手強いライバルが現れている。TwitterはPeriscopeというニュースのライブストリーミングを開始したし、Meerkatにもかなりのファンがいる。どちらもユーザー投稿のニュースビデオを公開しており、最近はAmtrakの脱線事故、ニューヨークのビル崩壊ロサンゼルスのカーチェイス 政治論争の内幕などが話題になっている。

こうした動きに対抗して「信頼できるニュース」の提供によって差別化を図ろうとしたのがYouTube Newswireだといえる。YouTubeは投稿ビデオの信頼性を向上させるためにさらに2つのサービスをスタートさせた。

firstdraft

その一つがThe First Draft Collectionで、これはソーシャルメディア・ジャーナリストのグループがこの秋に立ち上げを目指しているサービスで、ビデオの信頼性を検証するさまざまなリソースの提供を目指している。これには報道倫理の学習、検証のツールとノウハウの提供、詳細なケーススタディーの紹介などが含まれる。このチームにはEyewitness Media HubStoryfulBellingcat、First Look MediaのReported.lyMeedanEmergentSAM DeskVerification Junkieなどのサイトから検証のエキスパートが参加している。たとえばBellingcatのEliot Higginsはトレーラーで輸送される軍用車両の写真をGoogleストリートビューと付きあわせてロシアからウクライナに向けて送られる途中であることを突き止めた過程を説明している。

witness-media-lab

またYouTubeはWITNESS Media Labと協力して公民権や政治的権利への侵害の問題を深く掘り下げた情報を掲載するWITNESSというサイトをスタートさせた。 新しいサイトはすでに公開されており、Twitterフィードも配信中だ。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+