40万人が使うプログラミング学習サービス「Progate」、米国子会社を設立しグローバル展開を加速

「海外展開は思っていたより簡単じゃない、というのが正直なところ。プロダクトの基盤が一通りできてきた一方で、日本と海外でのニーズのズレなど課題も感じている。そこをどう乗り越えていくかが今後のチャレンジだ」——Progate(プロゲート)代表取締役の加藤將倫氏は同社の現状についてそう話す。

Progateが運営するプログラミング学習サービス「Progate」については、これまでTechCrunchでも何度か紹介してきた。

スライド教材を見て基礎を確認した後、ウェブブラウザ上で実際にコードを書きながら学べるスタイルを考案。初心者にとって難易度の高い環境設定などもなく、プログラミングを始めるまでのハードルが低い。

そんなProgateが力を入れているのが、英語圏を中心としたグローバル展開だ。同社では7月1日に初となる子会社Progate Globalを米国に設立。海外ユーザーの獲得をさらに加速させようとしている。

国内ユーザー数は約35万人、コンテンツ数も66レッスンまで拡充

Progateは2014年7月に、東京大学の学生だった加藤氏や取締役の村井謙太氏らが共同で創業。自分たち自身が苦労しながらプログラミングを学んだこともあり、初心者でも挫折しにくいサービスとしてProgateを立ち上げた。

特徴は初心者が最初につまずきやすいポイントを解消しつつ、実際に手を動かしながらプログラミングの楽しさに触れられること。

本や動画学習サービスを使って学習する場合、コードを書くためには自分で環境構築をしないといけないが、初心者にとってはこれが意外と面倒。その点Progateの場合はすぐにブラウザ上でコードを書くことができ、その結果をリアルタイムに確認できる。

2017年2月にはフリークアウトグループ、DeNA、エンジェル投資家から1億円の資金調達を実施(それ以前にもEast Ventures、ロンドンブーツの田村淳氏、メルカリ創業者の山田進太郎氏らから資金調達をしている)。調達した資金も活用しながら、英語版やアプリ版の開発、コンテンツの拡充などプロダクトの改善を着々と進めてきた。

特に国内ではアプリのリリース(1月にiOS版、4月にAndroid版)以降ユーザー登録のペースが以前の倍くらいになっているそう。国内のユーザー数は約35万人にまで増え、そのうちの5%ほどが有料会員だという。

Progateのキモとなるコンテンツについては、現在15コース・66レッスンを提供。直近ではメルカリ/メルペイの現役エンジニアと共同でGo言語のレッスンを開発するなど、外部のエキスパートと共同でコンテンツを作る新しい取り組みも始めている。

海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトが必要

このような背景もあり、加藤氏は「ProgateのVer1が完成に近づいてきた状態」と話す。ただこれはクチコミである程度ユーザーが安定的に入るようになってきた日本での話。海外では少し事情が違うらしい。

「海外版を出せば日本と同じような層に広がっていくかと思っていたが、そもそもターゲットの抱える目的や課題も違うことがわかってきた。海外で戦えるプロダクト、海外ユーザーのペインを解決できるプロダクトとしてはまだ足りない」(加藤氏)

具体的には「コンテンツが圧倒的に足りない」という加藤氏。同社にとってコンテンツの増強が今後の大きなテーマになるようだ。

Progate代表取締役の加藤將倫氏

たとえばインドの場合。現地の学校を回ったり若者と情報交換をしたりなどヒアリングをしてみると、「データサイエンスやマシーンラーニングのコースがあるのかをどこに行っても聞かれる」のだという。ここは現状のProgateではまだカバーできていない領域だ。

「海外の方がニーズが進んでいるイメージ。インドの場合だと高校の授業でProgateのレッスンのような内容を学んでいたりもするので、日本と同じように大学生向けに同じようなコンテンツを提供していては上手くいかない」(加藤氏)

そのため国内と海外ではユーザー層にも違いが生まれているそう。現在海外ユーザーは約5万人。内訳としてはインドが3万人、米国が1万人、その他が1万人とのことで、インドについては日本よりも年齢層が低く、10代後半がボリュームとしては大きい。

海外では日本以上にプログラミング学習サービスの選択肢も多くなるため、他社と比べられる機会が増えるという事情もある。

実際、加藤氏が注目するサービスのひとつとして挙げるUdemyなどには膨大な量のコンテンツが並ぶ。ユーザー投稿型のためコンテンツの質にはバラツキがあるものの「(プログラミングに関するものだけで)1万レッスンないしそれ以上のコンテンツがあり、上位5%のクラスは質も高い」(加藤氏)という。

「Progateで提供しているコンテンツには自信を持っているけれど、たとえば現状でPythonのコースは5コースしかない。これだけのために課金をしてまで使うか、クチコミで広がっていくかというと難しい。他にも選択肢がある海外ではなおさらのことだ」(加藤氏)

コンテンツが充実すれば海外でも十分チャンスはある

Progateの英語版。2017年10月のβ版を経て、2018年5月に正式リリース

後発とも言えるProgateが、今後海外でどのくらい広がっていくのだろうか。加藤氏に手応えを聞いてみたところ「コンテンツを拡充させることができればやっていける感触はある」という答えが返ってきた。

「インドや中国など、十分にプログラミング教育が発展していない国には大きな可能性を感じている。ツール自体もあまり知られていないので、そこまで後発というわけでもない。そこでしっかりと盤石な立ち位置を確立できれば、他のエリアでもより多くの資金を使って取り組める」(加藤氏)

一方の米国は相当大変になってくると話すが、「この市場はウィナーテイクオール(1社がひとり勝ちするようなビジネス)ではない」ため、いいコンテンツを提供できればチャンスはあるというのが加藤氏の見解だ。

大まかなプランとしては、まず海外で既存のコンテンツが刺さる層のファンを増やす活動に注力。並行して世界で戦えるようなコンテンツを開発しながら、新たなユーザーも開拓し日本と同様にクチコミで広げていく方針だという。

今回設立した米国法人も「世界で1人でも多くのファンを作る」手段のひとつ。インドでも近く法人の設立が完了する予定で、これがProgateの海外展開を加速させるギアとなりそうだ。

「自分たちの強みは徹底的にユーザーに向き合ったコンテンツを作れること。(このスタイルは崩さず)アプリや機械学習など対応するコースも増やし、『どんなものを学びたいかに限らずProgateであれば安心できる』という環境を作っていきたい」(加藤氏)