iOS 13に画期的新機能は少ないがクオリティ・オブ・ライフの改善が満載
デベロッパーの間で「クオリティ・オブ・ライフのアップデート」と呼んでいるのは「すでに動いている機能をさらに洗練させる」ことを意味する。地道な改良を積み重ねることが快適なユーザー体験を実現する道だ。iOS 13でAppleが力を入れたのもまさにそこだった。
一見して気づく派手な新機能はダークモードくらいだったが、これは悪いことではない。iOS 13はiOS 12より明らかに快適だが、その理由はさまざまな面でのクオリティ・オブ・ライフの改善にある。
以下はiOS 13ベータを実際に使ってみた感想だ。
ダークモードはゴージャス
ダークモードは快適だ。これはあらゆるアプリに適用可能なシステムレベルの改良なので実際にiPhoneで動かしてみないと実感しにくいかもしれない。いちばん簡単なのは画面をスワイプしてコントロールセンターを開き、輝度調整を長押しする。
マニュアルで起動する他に自動モードも設定できる。今のところ私のiPhoneでは夜になるとダークモードになり、朝になると解除される。朝夕の判定は現在地の日没、日の出時刻を使っているようだ。
Appleはノート、メール、メッセージ、Safariその他、自社提供のアプリについてすべてダークモードをサポートするようにアップデートした。こうしたアプリではダークモードはきわめて自然だ。
しかしサードパーティーのアプリの多くは残念ながらダークモードをサポートするアップデートを実施していない。しかし秋に正式版が公開されるまでにはポピュラーなアプリの大部分がアップデートされるものと期待している。
すでにアプリの設定でダークモードを選べるものも出ているが、Appleではいちいちマニュアルでダークモードをオンにしなくてもアプリがデフォルトでサポートするようになることを期待している。もちろんこの場合もアプリもアップデートが必要だ。
ハードよりレイヤーの改良
ダークモードを別にすれば、iOS 13は現行iOSと見た目はほぼ同様だ。 しかし注意深く観察するといくつかの点に気付くだろう。一つはアニメーションがスピードアップした。アンロック、アプリの起動と終了、スワイプ、通知のポップアップなどの動作が目につくほど高速化されている。
2つ目はFace IDの使い勝手の改善だ。ドラマティックというほどではないが顔認識が少し速くなっている。最新デバイスに買い換えなくもiOSのアップデートだけで高速化されるのはありがたい。
また新iOSではキーボードにスワイプ入力が追加された。キーボードのレイアウトもアップデートされ、3つのエリアに分割された。最上部は写真やリンクなど送信する重要な連絡先候補が表示される。
その下の部分には通常の連絡先やアプリを開くためのアイコンが並ぶ。さらに下にスクロールするとアプリごとに異なるアクションのリストにアクセスできる。
Siriの音声もこれまでより自然になった。またiショートカットも使い勝手が向上しSiriとの連携も密接化された。ショートカットはiOSにバンドルされてデフォールトでインストールされる。これはiPhoneでスクリプトやオートメーションを利用するために非常に便利だ。
音声起動のSiriショートカットがウィジェットになり、iOS 12以降「ヘイ、Siri、Citymapperで帰宅ルートを教えて」と命じてCitymapperを起動して乗り換え案内を参照できるようになった。iOS 13では Siriショートカットを起動するためのボタンが追加された。
さらに便利なのは一定の条件で自動的にショートカットを起動する設定ができるようになったことだ。たとえばCarPlayの位置情報やもっと手軽なNFCタグを使って特定の動作を実行させるシナリオを設定できる。たとえば、
- CarPlayやBluetoothを利用したカーオーディオにiPhoneを接続すると自動的にプレイリストを再生する。
- 機内モードに設定するとスクリーンの照度を落とし、省電力モードになる。
- ベッドサイドスタンドにiPhoneを置くとPhilips Hueスマートライトを消灯する、等。
アプリのリファイン
Apple製アプリはすべてアップデートされた。その度合はアプリごとにさまざまだ。特に写真アプリには非常に大きな変化があった
写真: デザイン、機能ともまったく別物になった。これまでの平凡なグリッド表示ではなくメインタブの下に4つのタブが置かれ、ライブラリーの検索がはるかに効率的にできる。
「年」タブにはその年に撮影した写真がまとめられる。「月」タブではiOSがAIの力を借りて写真を同一イベントにまとめ、もっとも興味を集めそうな写真から表示する。その日に撮影した写真は「日」タブにまとめられる。なんらかの理由で同一の写真が保存された場合、重複分は自動的に隠される。
「すべての写真」タブには従来どおり延々と続くグリッドにカメラロールの写真がすべて表示される。e. Live PhotosやLive Videosはプレビューで自動再生される。私自身は自動再生は好みではないが、ユーザー間で要望が多かったのだろう。
カメラの改良はさほど大きなものではないが、ポートレートモードで人物の髪の切り抜き精度がアップした。また編集機能も多少改良された。
マップ: マップ・データが引き続き改善されているが、一般ユーザーは気づきにくいかもしれない。乗り換え案内がリアルタイム情報になり、場所のリストを友だちと共有できるようになった。もっともCitymapper、FlightLogger、Mapstrなどの専用アプリを代替できるところまでは行っていない。
Look Around機能が追加され、現地の写真が見られるようになった。これはGoogleマップのストリートビューに似た機能でAppleストリートビューといえば分かりやすい。私は土地勘のあるサンフランシスコのマップで試してみたが、単に360°パノラマというだけでなく、立体感の高い3Dにもなる。
メッセージ: 以前から要望が多かった機能がいくつか追加されている。プロフィールに名前、写真を表示できるようになった。私はデフォールトの灰色のそっけないアバターが嫌いなのでこれはありがたい。
ミー文字を表示できるデバイス(A9チップ搭載)であればステッカーで共有できる。検索機能も強化され、やっと実際に役立つものになった。アドレスや特定のメッセージをすばやく探して当てることができる。
ヘルス: デザインは変更されたが機能そのものにはさほど大きな変化はない。ただし新iOSでは生理周期のトラッキングと予測ができるようになっている。
プライバシーとセキュリティー
iOS 13はこの部門に力を入れている。特に注目は「Apple IDでサインイン」の機能だ。残念ながら私のベータ版にはこの機能が表示されないのでまだ実地に試していない。しかし同僚のSarah Perez記者が詳しく解説しているので参考にしていただきたい。
現在新たにサービスやアプリにアカウントを作る場合、メールアドレスを始め多数の個人情報の入力を求められるのが普通だ。「Googleでサインイン」や「Facebookでサインイン」もこれらのアカウントが持っている個人情報がどれほどサードパーティーに渡るの不明だった。これに対して「Appleでサインイン」の場合、Appleがランダムに個人情報を生成してアカウントを生成する。Appleはアカウントの継続利用に必要なユニーク識別子以外のデータを保存しないためプライバシーを侵害されるおそれが非常に少なくなる。識別子はiCloudのキーチェーンに保存される。
またiOS 13では位置情報に関するプライバシー・コントロールも強化されデフォルトでBluetoothのスキャンをブロックする。これはユーザー知らないうちにアプリが現在置情報をアップロードするのを防ぐため4だが、多くのアプリは自動的に周囲のBluetoothを探すよう設定されているので作動に問題が生じる可能性がある(略)。
その他
iOS 13には下記のような改善も含まれている。
- アプリのアップデートの際、ファイルサイズが小さくなり、スピートがアップした。iOSはすべてのファイルをダウンロードするのでなく、当該デバイスに必要なファイルだけを要求する。
- アーカイブ・ファイルをzip/unzipできる。
- メールのフォントの種類、サイズ、色などをカスタマイズできる。インデントができ、ブレット付もリストを作れる。
- 「iPhoneを探す」と「友だちを探す」が「アプリを探す」に統合された。まだ試したわけではないが、理論的には「友だちがどこかに置き忘れたデバイスを探す」こともできるはずだ。情報はすべてエンド・ツー・エンドで暗号化されているためのぞき見されることはない。
まだ試せていない機能
- CarPlayが一新されたというが残念ながら私は自動車を持っていない。
- セキュリティーカメラがHomeKit互換ならファイルをiCloudに保存できるという。
- ARKitも改善されたらしい。
- App Storeからカスタム・フォントをインストールしてアプリで利用できる。
- 音楽アプリで歌詞をカラオケ・スタイルで同期表示できる。
- リマインダーのデザインが改良されたというが、以前のリマインダーを使ったことがないので評価できなかった。新しいリマインダーの評判はいいようだから使ってみるべきかもしれない。.
全体としてiOS 13にフレッシュな空気感が漂っている。すべての機能が少しずつ改善され、使いやすくなっている。ドラスティックな変化はほとんどなかったが、iOSのプラットフォームとしての快適性は大いに向上したと思う。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)