Instagramは「いいね!」の数を世界で非表示にする実験を実施
Instagram(Instagram)は各地の一部のユーザーに対して、「いいね!」の数を見えなくしている。同社がTechCrunchに語ったところによると、この「いいね!」の数を隠す実験は、世界の一部の国の限定されたユーザーに広げているという。これからは、そのコンテンツが「いいね!」に値するかどうかは、大勢の意見に頼ることなく、自分で判断しなければならない。だがこの変更により、ユーザーは「いいね!」の数が少なかったら恥ずかしいといった余計な心配をせずに、自分で大切だと思うものを気兼ねなく投稿できるようになる。
Instagramは、「いいね!」の数を、今年の4月からカナダで隠すようになった。そして7月には、この実験はアイルランド、イタリア、日本、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドに拡大された。Facebookも9月に同様の実験をオーストラリアで行っている。Instagramは先週、実験は米国にも広げると話していたが、現在は各国のごく少数のユーザーに対してのみ実施されている。Instagramは、今のところこの実験の反応は好意的だが、アプリにとっては根本的な変更になるため、今後もテストを続けるとツイートしていた。
Instagramはそのアプリを、「いいね!」の数を気にすることなく、人々が心地よく自己表現でき、シェアした写真や動画に集中できる場所にしたいのだと、広報担当者はTechCrunchに話してくれた。今でもユーザーは、誰が自分の投稿に「いいね!」をしてくれたか、その総数はいくつかは「いいね!」をタップすれば見ることができる。他人の投稿を見ている場合は、共通の友達で、それに「いいね!」をした人のうち数人の名前だけが示される。「いいね!」のタップもできるが、数を知りたい場合は自分で数える必要がある。
この実験の拡大は、インフルエンサーや写真の作者に損害を与える恐れがあるとの懸念を招くことにもなった。それは、Instagramが「いいね!」の数を隠すテストを実施した国では、「人気度の異なるインフルエンサーなど多くの人々の人気度が、3%から15%低下したというHypeAuditor(ハイパー・オーディター)の調査が公表されてからのことだ。
「いいね!」の数は、多くのクリエイターにとって重要なものであることは、Instagramも理解していると、広報担当者は私に言った。現在は、インフルエンサーたちがその価値をパートナーに伝える方法を鋭意研究しているという。「いいね!」の数が公開されなくなると、インフルエンサーのマーケティング代理店では、彼らが撮影したスクリーンショットによる自己申告に頼らざるを得なくなり、フォトショップなどで加工して不正に報酬を受け取ろうとする事件も発生しそうだ。
プライベートでは見ることができても、その投稿が報酬に値するだけのエンゲージメントを獲得しているかを確認する方法が代理店にはない。Instagramは、本当の「いいね!」の数を代理店と共有できるよう、パートナー向けダッシュボードやAPIクリエイターを提供する必要があるだろう。
InstagramのCEOであるAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は、先週開催されたWired25で、「それが人々の幸福と健康に役立つなら、ビジネスに損失を与える判断をすることになる」と話していた。「いいね!」の数を隠すことで、エンゲージメントの獲得や高い人気を示すことには意味がないと業者が判断すれば、Instagramの全体的な広告収入は減少してしまう。しかし、インフルエンサーのマーケティングによりクリエイターのポケットに直接送り込まれていた費用が、Instagramの公式広告に移ってくる可能性もある。そうなれば、Instagramの収益は増える。
Instagramの広報担当者は、以下の通知文をTechCrunchに提供してくれた。
本日より、「いいね!」数のプライベート化実験を、オーストラリア、ブラジル、カナダ、アイルランド、およびニュージーランドに拡大します。この実験に含まれる方は、ご自身でフィードに投稿したものを除いて、写真の「いいね!」とビューの総数が見られなくなります。初期の実験での反応は好意的ですが、これはInstagramの根本的な変更となるため、今後も実験を続け、世界中の国々からさらに多くを学びたいと思っています。
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これはおそらく、Instagramが公式に変更を実施し、世界各地のすべてのユーザーの「いいね!」の数を隠すようになるまでの最後のステップだろう。この実験が、精神的な健康状態をいかに改善するか、そしてアプリの利用にどれだけの損害を与えるかを彼らは注視し、見極めるつもりに違いない。
「いいね!」の数を隠すことは、健全な人間性のためには勝利であり、創造性が大いに高められることになるだろう。これまで人々は、自分の作品では「いいね!」を多く獲得できないと勝手に決めつけ投稿を控えたり、「いいね!」が得られなかったものを削除することが多かった。人は本当の自分や本当に伝えたいことよりも、本能的に、飾り立てたセルフィーや人生が華やかに見えるよう仕込んだ写真で公的人格を作り上げようとする。一方、それを見る人たちは、友達やインフルエンサーの大量の「いいね!」の数と自分の数とを比較して、恥ずかしく感じたり、自分を蔑んだりしてしまう。
この人気コンテストに終止符を打つことで、人々は一般大衆の反応を気にすることなく、型にはまらない自由な写真や、馬鹿げていたり、芸術的な作品をもっと投稿したいと思うようになるかもしれない。それによりInstagramのコンテンツは、完璧を求める陳腐な美観から脱して、時とともに多様性を増し、驚きと魅力に溢れたものになってゆくだろう。「いいね!」数を隠せば、本来ならそんなに「いいね!」を稼げないコンテンツをシェアしまくるInstagramのフェイクプロフィール、いわゆる「フィンスタグラム」のアカウントも減るだろう。
Facebookは「いいね!」ボタンの生みの親とされているが、赤いハートのアイコンを導入したのはInstagramが最初であり、Twitterもそれに従った。そうして一般の人々からの支持数をドーパミンの噴出量に変換した。Instagramが「いいね!」の数に背を向けたことで、ソーシャルメディア業界は、受容度の数値化への執着から、シェアをする上質な喜びへと大いなる移行期を迎えることになる。
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(翻訳:金井哲夫)