「量子アニーリング」で計算困難な産業課題の最適化を図るJijが2億円を調達、目指すは世界の最適化

AIスタートアップのJijは8月27日、約2億円の資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はリード投資家を務めたANRIとDEEPCORE、みらい創造機構の3社。

Jijはイジングマシンや量子アニーリングをはじめとした最先端のハードウェア・研究手法を研究しているAIスタートアップ。従来の計算手法では計算困難な産業課題の解決を図る技術開発を進めている。今回調達した資金は、企業向け最適化クラウド「Jij-Cloud」の開発強化、スマートシティの実現に求められる最適オペレーション計算のための新たなプラットフォームを構築の構築に投下するという。

まずは、おそらく多く読者が聞き慣れない「イジングマシン」「量子アニーリング」について簡単に説明しておこう。イジングマシンとは、質、量ともに膨大となった予想データや制約条件の中でに最適な判断を下す計算を実現するため、量子技術をベースにした計算手法のこと。量子アニーリングとは、その骨子となる、量子力学を使用した組合せ最適化向けのアルゴリズムを指す。と説明しても難解なのだが、同社は量子力学を活用して、これまではかなりの時間がかかったり、答えが出せなかった問題を解決するための技術を擁しているスタートアップだ。

同社はこれらの技術を使い、人の行動パターンの予測し、そこから生まれるであろう移動ニーズやエネルギー需給変動に対する新たなサービスなどを、従来以上に最適化することを狙っている。

Jij-Cloudは、事業会社向けのミドルウェアで、イジングマシンや量子アルゴリズムの専門知識を必要とせずに、簡単に最先端の量子最適化技術を扱えることを可能にする。2019年より一部アルゴリズムのライブラリは「Open Jij」としてオープンソースで公開している。また各種イジングマシンに対応するべく、NEC、日立、D-Wave、マイクロソフトなどとも提携を進めている。2020年5月当時、Jij はマイクロソフト開発のAzure QIOの利用を日本で唯一許諾された実績もある。

写真に向かって上段左から2人目がJijiの代表取締役社長を務める山城 悠氏、3人目がCTOの西村光嗣氏

このほか、各事業会社に対してコンサルティングや共同研究も進めている。例えば、ネットワークの安定化、電気ガスの供給安定化、生命保険のポートフォリオ最適化などの領域で同社の技術が使われているそうだ。直近では、豊田通商と「交通信号制御の最適化」をテーマとした共同研究も発表、信号機の点滅スケジュール制御によって自動車の待ち時間を20%削減 する試算を発表(Qmedia記事)した。

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