新型コロナ禍で急成長、小グループのバーチャル教育クラスを展開するOutschoolが47億円調達
ホームスクールの生徒が課外活動を充実させるプラットフォームとして2015年に始まったOutschool(アウトスクール)は、新型コロナウイルスの感染拡大以来、顧客基盤を急激に拡げた。米疾病対策センター(CDC)が定めた新型コロナ規制を順守するために学生がキャンパスを離れたため、プラットフォームが対象とする市場規模が劇的に拡大したのだ。
学生にとっては、小グループで行うライブのオンライン学習クラスが突然必要になった。エンジニアリングの勉強からレゴの課題、Taylor Swift(テイラー・スウィフト)の歌によるスペイン語の指導に至るまで、Outschoolのサービスに対する需要が高まっている。
「CDCが学校閉鎖の必要性について警告した際、『インターネットベースのテレスクーリング』について言及した」と共同創業者のAmir Nathoo(アミール・ナトゥー)氏は言う。「ビデオチャットによる授業を意味していることに気づいた。これはまさに当社が提供するものだ」。
2019年8月から2020年8月にかけて、オンライン教育クラスの予約が2000%以上増加した。しかし、急増したのはプラットフォームに積み上がった無料ユーザーだけではない。今年のOutschoolの売上高は前年の650万ドル(約6億8000万円)から約5400万ドル(約56億7000万円)に増えた。新型コロナ危機の結果初めて利益に転じ、年換算売上高は1億ドル(約105億円)を超えた。
収益性と成長が実現したのは新型コロナ時代だからこそかもしれないが、現在のOutschoolはパンデミック時代のブームにとどまらないという信頼の票を得ている。Reach Capital(リーチキャピタル)のJennifer Carolan(ジェニファー・キャロラン)氏はTechCrunch Disruptで、OutschoolがシリーズBラウンドで4500万ドル(約47億円)を調達し、これまでの調達総額が5500万ドル(約58億円)になったと発表した(最後のExtra Crunchのパネルディスカッションの動画を参照)。
ラウンドは、Reach Capital, Union Square Ventures, SV Angel, FundersClub, Y Combinatorなどの参加を得て、Lightspeed Venture Partnersがリードした。
獲得したキャッシュによりOutschoolは、今年25人で始まったスタッフの数を60人に増やす。
創業者のナトゥー氏は5歳からコンピュータゲームをプログラミングしていた。同氏自身が会社を始める際、他の子供たちが同氏と同じことをするのを助けるプラットフォームを作ることは正しいことだと感じた。
ナトゥー氏は2015年、Amazon Mechanical Turk(アマゾンメカニカルターク)とGoogle Consumer Surveys(グーグルコンシューマーサーベイズ)の構築を支援したMikhail Seregine(ミハイル・セレギネ)氏と、別のエドテック企業でYCの卒業生でClever(クレバー)の製品マネージャーであるNick Grandy(ニック・グランディ)氏を引き入れた。3人は、生徒が学校では得られない体験にアクセスする手段を考え出した。
関心の程度を見極めるために、同社はサンフランシスコベイエリアでの対面授業やオンラインコンテンツを試し、数百の家庭とテストを行った。最後に、アーリーアダプターとしてホームスクーラーとの協業を始め、人々が非伝統的な教育体験にお金を払うか検討した。
「ホームスクーリングは当社にとって興味深いものだった。新しいアプローチにより教育システムが根本的に改善するとすれば、既存のシステムの外で始まる可能性が高いと考えたからだ」とナトゥー氏は語った。
また同氏は、ホームスクーリングコミュニティは、自主的な課外活動に柔軟に対応できると述べた。さらに、ホームスクーリングを採用している家庭は、数日間小グループで行うライブの課外活動に大きな関心を持っていた。 このアイデアが彼らを2016年にY Combinatorに向かわせることになり、卒業と同時にCollab+Sesameがリードする140万ドル(約1億5000万円)のシードラウンド(未訳記事)につながった。
「我々は皆、仕事でグループビデオ通話をしたことはあったが、K12(日本の高校3年生に相当)でこれを学習に利用するのを見たことはなかった」と同氏は述べた。Outschoolは小グループでライブのインタラクティブクラスを展開し始め、すぐに軌道に乗った。売上高は2017年の50万ドル(約5250万円)から2019年には600万ドル(約6億3000万円)以上に増加した。
Outschoolは2019年5月、エドテックに力を入れるベンチャーキャピタルファンドであるReach CapitalからシリーズAの資金調達の機会を得た。同社はホームスクーリングの家庭にとどまらず、もっと広い対象に向けて考え始めた。もし学校に行く子供がいる家庭で、週末や休日に課外活動を行いたいというニーズがあったとしたらどうだろうか。
同社にとって今は全然違うと感じられる。さらにEdTech(エドテック)については広い範囲で著しく異なる(未訳記事)と感じている。ナトゥー氏によると、Outschoolでクラスを購入する親の87%は、子供が学校に通っている。Outschoolの対象となる市場全体の成長には新たな課題と目標が伴う(未訳記事)。
パンデミックが始まったときOutschoolのプラットフォームには1000人の教師がいた。 現在は1万人で、全員がスクリーニングを受けている。
「それは大きな挑戦だった」とナトゥー氏は述べた。「当社はオープンなマーケットプレースではないため、社内で供給と品質のチームを迅速に拡充する必要があった」。裏方の作業は難しく時間もかかるが、学生のNPSスコア(顧客ロイヤルティの指標)は高いままだと同氏は語る。
Outschoolはライブ学習の分野で多数のライバルがいる。例えばJuni Learning(ジュニラーニング)は、コーディングと科学に関するライブの小グループクラスを販売している。同社はForerunner Venturesがリードしたラウンドで750万ドル(約7億8000万円)を調達し、ARR(年間経常収益)は約1000万ドル(約10億5000万円)だ。OutschoolのARR(年間経常収益)は1億ドル(約105億円)に上る。
「当社はJuniよりもはるかに広い範囲の学習オプションを提供する。Juniはコーディングクラスに特化している」とナトゥー氏は言う。Outschoolは現在、ウェブサイトに5万以上のクラスを掲載している。
Varsity TutorsはOutschoolに似た別のライバルだ。Varsity Tutorsは数学や英語などの主要科目でオンラインチューターと大規模グループクラスを販売している。ナトゥー氏は、Outschoolの差別化のポイントは小グループでの教育とトピックの多様性だと語る。
Outschoolの今後についてナトゥー氏は、ある矛盾するアイデアを持っている。プラットフォームが学校に導入されたらどうなるか。
「当社の今後の戦略について、私は新しいタイプのクラス、国際的な展開、学校への展開について考えている」と述べた。
Outschoolは成長する消費者向けビジネスをエンジンとして、各学区(の教育委員会)に食い込んでいく可能性がある。各学区は予算が少ないため取引を行うのが難しいことで有名だ。しかし、ナトゥー氏にとって学習へのアクセスを増やすために学校に入り込んで行くことは重要だ。
「当社のビジョンは地域の学校を補完するグローバルな教育コミュニティを構築することだ」とナトゥー氏は語った。
画像クレジット:valentinrussanov / Getty Images
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(翻訳:Mizoguchi)