アップルが紛失物トラッカー「AirTag」をついに正式発表
Apple(アップル)は米国4月20日、正式にAirTagを発表した。Appleデバイス所有者が同社の「Find My」アプリを通じて紛失したものを見つけられるようにするロケーション追跡ビーコンだ。AirTagそのものは小型の円形デバイスで、財布やバッグ、鍵などのパーソナルアイテムに取り付けられる。プレオーダーは4月23日から受け付けが始まり、4月30日発売だ。価格は29ドルで、4個セットだと99ドルとなる(編集部注:日本での価格は1パック税込3800円、4パック税込1万2800円)。
タグは小さな丸い形状で、磨かれたステンレススティールと白色の外観だ。フロント部分にはAppleのロゴが入っている。AirTagにはさまざまなケースのオプションが用意されていて、キーチェーンドングルも付いているため、AirTagをたとえば鍵やハンドバッグなどに取り付けることができる。絵文字を刻むといったカスタマイズも可能だ。
AirTagはAppleが「Precision Tracking」と呼ぶアイテム追跡に独自の超広帯域無線チップU1を使っている。これはU1チップと超広域無線、ARkit、アクセラレーター、ジャイロスコープを使っているiPhone最新機種(iPhone 11、11 Pro、iPhone 12シリーズ)で機能する。そうしてFind Myアプリは音と振動、ビジュアルフィードバックを使ってユーザーを紛失したAirTagへと誘導できる。
Appleによると、AirTagはまた低消費電力のBluetooth LEを活用しており、バッテリーは1年持つとのこと。バッテリーはユーザーが自分で交換できる。AirTagは防水・防塵規格IP67をクリアしている。つまりトイレに落としたとしてもおそらく大丈夫だ。しかしiPhoneのような奇跡は期待しないほうがいい。
AirTagを取り付けたアイテムが迷子になったときは、その場所を知らせるためにAirTagのビルトインスピーカーから音がで出る。もしAirTagがソファのクッションの下などよりも遠くにある場合、ユーザーはAirTagを「紛失モード」にできる。そうすることでみんなのデバイスを使ったAppleのFind Myネットワークを活用できるようになる。
プライバシーを確保するために、AirTagの位置情報データと位置履歴はAirTag内部に保存され、Find Myネットワーク内のコミュニケーションはエンド・ツー・エンドで暗号化される。
そしてもしあなたが誰かの紛失したAirTagに行き当たったら、iPhoneあるいはNFCデバイスを使ってその情報が所有者にコンタクトできるウェブサイトにいくようにできる。
発売にあたり、Appleは白、ネイビー、黄色、オレンジのポリウレタンループ(29ドル、日本では税込3800円)や、茶色と赤色のレザーループ(39ドル、日本では税込5500円)、茶色、赤色、青色のレザーキーリング(35ドル、日本では税込4500円)などのアクセサリーも扱う。HermèsとのタイアップでAirTag Hermèsも用意し、これにはカスタム刻印が入ったAirTag、そしてバッグチャーム(日本では税込3万5800円)やキーリング(日本では税込4万1800円)、トラベルタグ、ラッゲージタグ(日本では税込5万3800円)などの皮アクセサリーが含まれる。
「AirTagの導入で、この驚くべき新しい能力をiPhoneユーザーに提供することをうれしく思います。暮らしの大事なアイテムの場所を特定できるようにするのに広大なFind Myネットワークを活用しています」とWorldwide iPhone Product Marketing担当副社長のKaiann Drance(カイアン・ドランス)氏は声明で述べた。「デザイン、比類のない発見エクスペリエンス、そしてビルトインのプライバシーとセキュリティの機能で、AirTagは顧客にAppleのエコシステムの力を活用する新たな方法を提供し、iPhoneの汎用性を高めます」。
Appleのコードリファレンスで見つかったアセットに加え、AirTagは2020年、誤って同社の公式YouTubeビデオに登場した。AirTagはまた米規制当局でのAppleの反競争的行為の例としても取り上げられた。
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2020年にTileは下院司法委員会でAirTagについて、紛失物トラッカーの独自バージョンを立ち上げるというAppleの決断は、Appleの新しいプロダクトにファーストパーティとしてのアドバンテージを与えると指摘した。Appleのデバイスは、Tileのアプリのようにユーザーにバックグラウンド追跡への同意を尋ねるポップアップを表示させ続けることなくバックグランドで作動させられるだろう、ともTileは説明した。Appleのデバイスはまた「Find My」に統合されるだろうが、他社のタグはそうはならないだろう。
当局の調査を受け、Appleは2020年6月のWWDCデベロッパー会議で「Find My」をサードパーティ企業にも開放すると明らかにした。しかしながら、その申し出はどうやら考えられていたようなものではなさそうで、企業は秘密保持契約(NDA)にサインしなければならず、Appleの顧客は競合するデバイスを同時に使うことは禁じられるようだとワシントンポストは指摘している。
4月20日のイベントに先立ち、AppleはFind My Network Accessoryプログラムの立ち上げを発表した。これはFind Myアプリにアクセスしたいサードパーティのメーカーに門戸を開くものだ。アーリーアダプターにはVanMoofのS3とX3電動自転車、BelkinのSOUNDFORM Freedom True Wireless Earbuds、そしてAirTagsの競合相手であるChipolo ONE Spotが含まれる。しかしTileは含まれていない。Tileはあきらめたくない自前のiOSアプリを通じて顧客と直接の関係を築いているためにFind Myに参加したくないのだとTechCrunchは理解している。
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Appleの「紛失物ファインダー」分野への参入は、Appleが「Find My」を開放するという譲歩があるにせよ、Tileのような企業はさらに厳しい競争にさらされることを意味する。Tileはこれまでのところ、独自の超広帯域無線で作動するトラッカーを立ち上げる計画(2021年発売される)を前もって発表することでAppleの計画に対抗してきた。Appleは自社のエコシステムをしっかりと握っていて、これはTileにさまざまなフォームファクターやクロスプラットフォームのサポートなどのアドバンテージに注力するよう強制し、AirTagのような新製品の立ち上げに貢献する。
AirTagは4月23日太平洋夏時間午前5時(日本時間4月23日午後9時)からプレオーダーできる。そして4月30日からApple Storeアプリ、Apple Stores店舗、Appleの正規販売代理店、いくつかの通信会社でAirTagとその他のアクセサリーが販売される。関連記事
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Apple、APPLE SPRING HARDWARE EVENT 2021、トラッカー、AirTag
画像クレジット:Apple
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(文:Sarah Perez、Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi)