テスラのライバルNIOにLiDARを供給する中国Innovusionがシンガポール政府系ファンド主導で69.5億円調達
レーザー光を利用して距離を測定するリモートセンシング技術であるLiDAR(ライダー)に賭ける投資家が増えてきており、最近では自動車メーカーからも多大な関心が寄せられている。しかし、かつては法外なコストがかかったことなどから、Elon Musk(イーロン・マスク)氏に長い間はねつけられた技術でもあった。
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設立5年目のLiDAR企業で、中国のEVメーカーNIO(ニーオ、上海蔚来汽車)のサプライヤーでもあるInnovusionはこのたび、シリーズBラウンドで6400万ドル(約69億5000万円)を調達した。今回の資金調達により、同社への総投資額は1億ドル(約108億6000万円)を超えた。これは決して小さな金額ではないが、同社はVelodyne(ベロダインライダー)やLuminar(ルミナー)など、数億ドル(数百億円)の資金を調達しているより大規模な企業との競争にさらされている。
Innovusionの最新の資金調達ラウンドを主導したのは、シンガポール政府が所有する政府系ファンドであるTemasek(テマセク)だ。その他の投資家には、Bertelsmann Asia Investment Fund、Joy Capital、Nio Capital、Eight Roads Ventures、F-Prime Capitalが含まれている。
Innovusionは米国カリフォルニア州のサニーベールと、中国東部の上海近郊に位置する蘇州にコア開発チームを置いている。蘇州は、ロボタクシーの自動運転ユニコーンであるMomentaの本拠地でもある。
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Innovusionの共同設立者兼CEOであるJunwei Bao(ジュンウェイ・バオ)氏は、業界の既存大手企業に怖気づくことはないという。バオ氏はBaidu(バイドゥ、百度)で自律走行用のセンサーやオンボードコンピューティングシステムを担当していたが、検索エンジン大手である同社のVelodyneへの投資にも携わっていた。
「彼らは、大学生が研究室で設計するような感覚でモノを設計していました」とバオ氏はVelodyneについて語った。
LiDARは5年ほど前まではニッチ市場だったと、同氏は説明する。この技術は主に軍事、測量、マッピングなどの分野で、アマチュアの小規模なコミュニティによって使用されていた。出荷量としてはこれらは比較的小さな市場であり、Velodyneはその需要を満たしていた。
「彼らは工業化や大量生産、ロードマップの拡張性などを考えていませんでした。彼らはパイオニアであり、我々(Baidu)はその価値を認めていましたが、同時に弱点も知っていました」。
公平にいうと、シリコンバレーに拠点を置くVelodyneは現在22億ドル(約2390億円)規模の企業であり、トヨタやフォルクスワーゲンなど世界最大級の自動車メーカーに製品を供給している。また2020年、SPAC合併により上場したことで、多額の資金を手にしている。一方のInnovusionの戦略は「今後5年間は十分に使える」センサーを自動車メーカーに提供することだとバオ氏はいう。同社は「成熟した部品」を選択しているため、年間10万ユニットに向けて生産能力を迅速に拡大できるとのこと。
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現在の同社最大の顧客は、中国での Tesla(テスラ)のライバルであるNIOで、後者はベンチャーファンドNio Capitalを通じてInnovusionに出資している。Innovusionは自動車用LiDARの大量生産のために、中国の自動車部品メーカーJoyson Electronicsのスマートカー部門であるJoynextと提携している。
今のところ、Innovusionにとって最大の市場は中国だ。同社は2021年、主にスマートトランスポーテーションや産業用として、数千ユニットの出荷を予定している。2022年にはNIOの高級セダン「ET7」に数万ユニットを納入する目標を掲げており、その測距範囲は最大500メートルと野心的な数値で、標準的な120度の視野角を持つという。
中国では、自動車メーカーとLiDARサプライヤーとの間で同様の提携が多く行われており、前者はLiDARを利用していち早く「自律走行」の約束を実現しようと競っている。NIOと競合するXpeng(シャオペン、小鵬汽車)は最近、ドローンメーカーDJI傘下のLiDARメーカーであるLivox(光響)のLiDARセンサーを搭載したセダンを発表した。DJIは、コンシューマーグレードの手頃な価格を売りにしている。
Innovusionも同様に価格を重視しており、年間10万台の生産量で、1台あたり約1000ドル(約10万8600円)で自動車メーカーにLiDARを販売している。
「3万ドル(約325万円)、または5万ドル(約540万円)するクルマに1000ドル(約10万8600円)の初期費用と2000ドル(約21万7200円)の費用を加えることは、手頃な価格といえます」とバオ氏はいう。
Innovusionは、この新たな資本により、自動車用LiDARの生産量を増やし、スマートシティやスマートカーの研究開発に力を入れていく予定だ。同社の従業員は100名を超えており、2021年中に200名以上に拡大する予定とのこと。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:LiDAR、Innovusion、資金調達、NIO、中国、Temasek
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(文:Rita Liao、翻訳:Dragonfly)