進化するピアツーピア(すっぴんの人間同士の)オンライン関係とサービス

[筆者: Semil Shah]

編集者注記: ゲスト筆者Semil Shahは起業家で、主な関心分野はデジタルメディア、消費者インターネット、そしてソーシャルネットワークだ。彼はPalo Alに住んでいて、Twitterの@semilshahでフォローできる。

何年も前のことだが、大学を卒業したばかりのぼくはニューヨークで仕事を見つけたいと思った。そこでまず、故郷の実家に帰って、準備のための金集めをすることにした。友人たちとルームシェアするにしても、最低1か月ぶんの家賃や予備のお金は必要だ。実家にいられる期間は1か月だから、どこかでバイトをするよりは、自分の持ち物を売ったほうが早いと思った。そこで、いろんなものをeBayのオークションに出した。当時の実家のインターネットはダイヤルアップで、入札者には品物の写真を郵送しなければならなかった。落札者には、小切手が送られてきて銀行に入金できてから品物を送った。1か月のあいだにぼくは、冬用のジャケット類や、各種スポーツ用具、そして野球カードを失い、税金のかからない7000ドルを手に入れた。ニューヨーク行きの資金としては、十分だった。

その数年後には、サンフランシスコに引っ越した。そのときはCraigslistが助けてくれた。最初の部屋も、そこに置く家具やステレオも、それに、なんとかお金を稼ぐためのいろんな仕事も、すべてCraiglistからだ。当時は言葉さえ知らなかったが、ぼくのために供給と需要を結びつけ、時間をお金に換えてくれる手助けをしたものは、 ピアツーピア(peer-to-peer, P2P)のネットワークと経済だった。委託販売に頼んだり、ガレージセールをやったり、あるいは新品を買ったりしなくても、ぼくはもっぱら、P2Pネットワークに後押しされて、ニューヨークやサンフランシスコに引っ越すことができたのだ。〔訳注: 本稿でのpeer-to-peer(同格者から同格者へ)は、ネットワークノードのタイプ(クライアントとサーバの区別/格差がない)を指す語ではなく、単純に”一般消費者同士”、あるいは”人間同士”というような意味。〕

それはいわば、P2P 1.0だった。主役はeBayとCraigslist、数十億人を結びつけるネットワークだった。これら2社は今でも頑張っているが、でも今は、ピアツーピアの進化形であるP2P 2.0が始まっている。当時は気づかなかったが、実は学生時代にすでに、P2P 2.0の原型のようなものに触れていた。それはクラスメートのJames Reinhartが、”中古衣類のためのNetflix”というアイデアを言い出したときだ。その後そのアイデアは、ベンチャーキャピタルから資金を得てthredUPへと有形化したが、それは親たちを結びつけるP2Pネットワークで、子どもが大きくなったときに、状態の良いベビー服や子供服、あるいは新品を買うと高い用品などを、小さな子のいる親に売れるサイトだ。もう一つの成功例がLending Club、ここは借り手と貸し手を結びつけ、クレジットカードの負債や小企業の債務の借り換えを助けるサイトだ。

今、P2P 2.0は活況を呈している。そしてそれは、人びとの人生を、すこしずつ楽なものにしている。Y Combinatorの優等生Airbnbは、何かの大会のとき町中のホテルが満杯になり、泊まれない人たちのために、自分たちのアパートでエアマットレスを貸してあげて小銭を稼ぐ、という思いつきのバイトから始まった。しかもそれは、朝食付きだ! それが今では急速に成長して、スペースを探している人と余っている人を結びつける人気サイトになっている。部屋や(一晩寝るための)ソファーだけでなく、ボート、ツリーハウス(樹上の小屋)、それにお城さえ、借りることができる。Airbnbが大成功したものだから、世界中にいくつかの物真似サイトが生まれ、たとえばP2Pの車共有ネットワークGetAroundなどもある。

P2Pの新人たちで、今いちばんすばらしいと思うのが、Zaarlyだ。人並み外れて背の高いファウンダは、エコノミークラスで飛行機に乗るときには、相手の人にすこしお金を払って、非常口席の人と席を替わってもらいたい、と思った。そう思ったときに、Zaarlyが生まれた。それは、携帯電話の位置機能を利用して、何かを求めている人と、それを提供できる人を結びつけるサービスだ。忙しいニューヨーカーたちが、お金を払ってでもいいから何かを欲しいとき、今ではZaarlyがそれを届けてくれるのだ。Zaarlyは、eBayが売り手と買い手を結びつけたように、時間とお金をP2P的に結びつける。

P2P 2.0の多様な展開が可能になっているのは、携帯の位置機能と、ソーシャルネットワークのおかげだ。今後はもっともっと高度なP2Pのアイデアが、今日のテクノロジの新しい利用形式として登場するだろう。消費者向けの新しサービスを志す起業家たちも、今ではAngel ListのようなP2Pサービスでシード資金を調達できる。つまり、資金提供者と起業家をP2P的に結びつけるのだ。またTask Rabbitは、個人と企業を結びつけ、企業はちょっとした仕事のアウトソース先を、このサイトでバイト探し/パート探しをしている人たちの中に見つけることができる。そしてListiaは、”クレジット”という仮想通貨を介する物々交換のサービスだ。ほかにも、おもしろいP2Pサイト/サービスをご存じの方は、ここで教えていただけるとありがたい。

このようなP2Pの取引〜助け合い関係を、支払いの面で支えるのがSquare、Roam、Bumpなどのサービスだ。たとえばBumpは、買い手と売り手が互いに自分の携帯電話を揺することによって、データの送受をする。Bumpは携帯電話の加速度センサーの動きを計測して二人のユーザを結びつける。Squareは、クレジットカードと携帯電話を使って買い手と売り手を結びつける。買い手は、携帯電話のヘッドフォーンジャックに挿入したカードリーダーを使って、支払い情報を売り手側へ送る(まだ携帯の加速度センサーやフォーンジャックなどを有効に活用しているサイトやサービスが少ないので、SquareやRoamやBumpが目立つのだ)。〔Bump関連記事: (1)、(2)、(3)。〕

今日のP2Pの推進力となっているものは、ネットワーク技術によって時間とお金や供給と需要のあいだの均衡を見つけることが可能になっているので、普通の消費者同士のあいだで可能なやりとり(トランザクション)のタイプが増えているという事実だ。いままで不可能だったトランザクションが、今ではまったく新しい経済を作り出し、それらは既製のブランドや、中間搾取とは無縁な形で展開されている。

インターネットの商業化が激しく進む中で、P2Pには、関係や取引ややりとりの中に人間性を実現できる性質もある。今後のP2Pサービスは、そういう人間的な要素や個人化、発見といった要素を、より前面に打ち出すことができるだろうか? 個人に食事を提供するHousefedのようなサービスは、夕食に冷凍食品をチンするわびしい食事に置き換わるだろうか? 今ではP2Pエンジンという製品もあるので、それらを使って新しいタイプのビジネスが続々登場してくれば、すばらしいだろう。それらの新ビジネスは、一体、どんな既存ビジネスをディスラプト(disrupt, 破壊)するのだろうか。

不況からの回復の歩みの遅い合衆国経済にとっても、人びとを結びつけて何かを実現するという新しいアイデアの続出は、貢献するところが大きいだろう。またそんなサービスの海外展開の可能性も、けたたましく大きい…情報化がすでに進んでいる国や文化圏ではとくに。というか、それの持つ可能性がとても大きいからこそ、飛行機の座席を交換するとか、何かの大会のときに、夜横になるための安価な場所を探すといった単純な欲求が、全世界に浸透するほどの新しい、お互い人間同士としてうち解けたざっくばらんな、マイクロ経済を作り出し、加速するのだ。

写真クレジット: Flickr/ NASA Robonaut

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))