「プル」の威力
編集部注:本稿の筆者、Alex RampellはTrialPayのCEOである。RampellはTechCrunchに定期的に寄稿している ― これまでのゲスト寄稿の一覧はこちら。
電子メールやFacebook、Googleの価値をこれほどまでに高めているものは何か。答:そこを訪れることが殆どの場合自発的であることだ。実際には、脳内のシナプスが、あなた宛のメールやFacebookフィードをチェックさせたり、何かをGoogleで調べようと決断させたりしているわけだが。別の言い方をすれば、人々はコンテンツを自分自身で引っぱって(プルして)くるのであり、コンテンツをプッシュ― 押しつけ ― されるのではない。
消費者向けウェブアプリケーション一番分かりやすい見方は「プル」と「プッシュ」の複雑な重ね合わせと考えることだ。これらの用語は、一時代前の「プッシュ」と混同しやすいが、「プル」とは消費者による任意の行為であり、「プッシュ」は売り手や製作者からの売り込みだ。消費者は、携帯電話やコンピューターからは究極的に「プル」している。それ以外のすべては、消費者に対して「プッシュ」される。それは広告やメール、その他ビジネスチャンスやトラフィックを求める企業の拡販行為を通じて行われる。
Facebookがこれまでに「引き寄せた(プルした)」最大の技は、自身をプッシュ・プラットフォーム(ユーザーを呼び戻すためにメールに頼る)から、事実上のプル・プラットフォームへと転換させたことだ。Facebookは、ユーザーの50%以上が毎日ログインしていると豪語しており、私の推測では、その殆どが誰かに促されることなくそうしている。今でもプッシュに価値はあるが、Facebookが創り出した膨大なプルを補完しているにすぎない。
なぜ、ウェブ企業にとって「プル」がそれほど重要なのか。それは人間の心理と経済が交叉する力だ。
第一は心理。殆どの人が「売られる」ことをどれほど嫌っているか考えてほしい。「売りつけられる」のはプッシュの一形態だ。消費者は毎週何百という頼みもしない売り込みやメールをプッシュされている。彼らはそうした勧誘を無視することを覚える。購売意欲のない時には特に。レレバンス(適切度、関連度)は、売り込みと消費者との適合度を時間でパラメータ化した関数だ。
第二は経済。プル・プラットフォームでは、顧客のリーチや獲得に金を使う必要がない。プッシュ・プラットフォームでは必要だ。Facebookがユーザー1人当たりに使うマーケティング費用は、この世で知られているどの会社よりも少ない。Facebookが本質的にバイラル(伝染性)であり、膨大なネットワーク効果があることを踏まえても、この自発的プル現象はFacebookの優越性に不可欠である。
プルの価値は、消費者向企業に限らない。どんなB2B企業も「需要創出」の価値を知っている。顧客の「プル」を触媒することだ。最速最安の販売サイクルは、潜在顧客によるプルから始まる。
どのウェブ企業にとっても、プルの育成は価値創出と顧客参加に不可欠である。プルが不足したばかりに沈滞する、優れたアプリケーションや驚異的テクノロジーはいくらでもある。しかし、「プル」プラットフォームであること最大の経済的実績は、「プッシュ」企業が費用を払って顧客を捕えなければならないメカニズムに、自らがなってしまうことにある。この期待こそ、Twitterのような企業が、最少の収益で十億ドル単位の評価額をつける理由だ。
プル育成の考え方をいくつか挙げてみる。
事象を中心とした計画
Groupon Nowは、Grouponがその伝統的プッシュサービスにプルを加えようとする試みだ。おなかが空いた、どこへ行こう? Grouponだ。 人間のあらゆる欲望には自然なプル傾向がある。人の欲望に対する「第一応答者」になることには驚くべき価値がある。
オフラインのアナロジーを見つける
プルが殆どの形帯で、決められたソーシャル・パターンにあてはまることは、上の「人間の欲望」についての解説で述べた。Google以前、人々は電話帳を使って(自発的に)サービスを見つけた。メール以前、人々は郵便受けを、通常決まった時間(郵便が配達された後)に、確認した。
繰り返される質問に答える
コンテンツの中には、消費者が必ずプルしたい(あるいはプッシュされたい)タイプのものが存在する。こうしたタイプのコンテンツは、消費者が繰り返す質問の答えであることが多い。いくら使ったか(銀行ウェブサイト)。どこへ行くのか(Google Maps)。どうやってそこへ行くのか(Kayak)。体のどこが悪いか(webMD)。
ブランドと親密度を作る
上記のいずれかが満たされれば、ブランドと信用の蓄積がプルを育てる。摩擦のない「既知」の経験は、取引行動のためのプルを触媒する。Amazonは、Googleの最大出費者として、かなりのプッシュを実施しているが、消費者が買おうと決断する時には、膨大な量のプルの恩恵に預かる。これはブランド連携の一つだが、同時にユーザーや支払い情報の蓄積でもある。
ウェブ企業が成功する上で、プルに代わるものはない。重要なのは、やり取りの繰り返しの中から、十分価値のある何かを作り出すことだ。Reid Hoffmanはこう指摘する。「ソーシャル・ネットワークは、[カトリック]七つの大罪に踏み込んだ時に最もうまくいく。人類の夜明け以来、人々が自発的にこれらの大罪を犯してきたことは偶然ではない。
画像提供:thisisboss
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(翻訳:Nob Takahashi)


