Appthorityはモバイルアプリのリスキーな動作の可能性をチックしてくれる

未成熟な市場においては、社会的な合意や制度が追いつかないことはよくある。例えば、モバイルアプリにおけるプライバシーの問題がそうだ。欠陥がある場合には、アプリ開発者や企業の側に故意や悪意がない場合であっても、期せずして深刻な問題に発展してしまうこともある。

記憶に新しいのは、利用者に明示的に説明することなくアドレスブックデータをアップロードしているとして騒動になったPathや、ユーザーの同意を得る前にデータを収集、送信してしまうなどの致命的な瑕疵がプライバシー侵害であるとして国内で批判を集め会社の解散、清算に至ったミログだ。この他にも、TwitterやFacebookのモバイルアプリもセキュリティー上の問題があるとした訴訟を抱えており、このような事例は後を絶たない。

サンフランシスコ発のAppthorityは、まさにこの問題に取り組んでいる。

Appthorityは、モバイルアプリ向けのセキュリティ対策ソフトウェアを提供するスタートアップだ。開発したアプリのバイナリコードをAppthorityのサーバにアップロードすると、モバイルアプリが実行するリスキーな動作の可能性(マルウェアを含んでいないか、情報漏洩をさせていないか、位置情報のトラッキングをしていないか、センシティブなデータを安全ではない形式で送信していないか、など)、すなわち、セキュリティー上の脆弱性を中心に、複数のチェック項目についてアプリ内を自動的に分析して、改善すべき点についてのレポートを生成してくれる。すでにモバイルアプリの開発や管理の際のセキュリティを向上するためにAppceleratorやApperian、BoxToneといった企業とのパートナーシップも結んでいる。

このAppthorityが、本日(米国カリフォルニア時間で5月2日)、VenrockやUS Venture Partners (USVP)などを引受先としたシリーズAの資金調達の完了を発表した。調達額は625万ドル。日本円にして約5億円になる。

ステルスモードで10カ月の開発を続けてきたAppthorityがシード資金を得ずにこのような調達をすることができた背景には、スマートフォンアプリの市場が成長しつつある米国において、「“良いアプリかどうか”に加えて、“セキュリティ”がより求められるようになりつつある」(共同創業者兼PresidentのDomingo Guerra)ことが上げられる。

メキシコ出身の起業家で、スタンフォード大学を卒業しているDomingoによれば、「モバイルのアプリという市場は、未成熟で、まだまだ多くの人にとって未知の世界」だということだ。「だから、PathやFacebookなどのセキュリティーに関する騒動も、必ずしも彼らに悪意があって起こったことではないと考えています。僕らもこういう経験を知見としてプロダクトの中に蓄積しながら、安心してモバイルアプリを使うことができる世界にしていけるように貢献していけたらと思っています。」

今後、モバイルのセキュリティーについては、モバイルだけに特有の問題も出てくるかもしれないし、まだまだこれからみんなで考えながら整備していかなければならないものだ。だからこそ、失敗者のことを経験者と呼ぶシリコンバレーのカルチャーはこの問題に対しても重要な役割を担っている。そして、そのカルチャーの中では、今後も未成熟な市場の中で繰り返されることが予想される失敗の経験を糧として活かしながら、社会全体をより良い方向に発展させていくことができるのではないかと思う。そういう意味でも、Appthorityが取り組んでいる問題には多いに共感できるし、今後にも多いに期待している。

編集部:この原稿は高橋雄介氏による寄稿である。高橋氏はIndividual Companyの創業者でありCEOである。現在は彼は米国でのビジネスの立ち上げのために4月からサンフランシスコに滞在して、米国滞在で得た生の情報を執筆している。