ビッグデータアプリケーション(BDA)の勃興と(単なる)SaaSの没落

[筆者: Raj De Datta]
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編集者注記: このゲスト記事を書いたRaj De Dattaは、BloomReachのCEOで協同ファウンダだ。Twitterでは@BloomReachIncでフォローできる。

Webには洪水のように大量の情報が流れ込み、その結果、今のWebの90%は最近の2年で作られたと言っても過言ではない。そして今Web企業は、自分たちのビジネスを動かすために、そのビッグデータを理解し利用する方法を求めている。かつてSaaSとクラウドがビジネスのやり方に大きな革命をもたらしたのと同じく、ビッグデータアプリケーション(Big Data applications, BDA)も、やはり革命をもたらすだろう。BDAはWeb上のアプリケーションであり、企業とWeb全体の膨大なデータを解釈し利用して、ユーザに従来よりもインテリジェントな結果を配布する。BDAは、クラウドの最良の機能を利用する…それらはWeb上でホストされ、マルチテナント(マルチユーザ)であり、HadoopやnoSQL、それに一連のリコメンデーションと機械学習のテクノロジを使う。

でも、BDAのどこが良いのか? その基盤的データ構造がHadoopやnoSQLを使ってるからといって、それのどこがありがたいのだ? 単にデータ構造のスケーラビリティがこれまでより大きいだけで、感動する経営者はいない。かんじんなのはBDAだ。BDAはデータをクールなインタフェイスで再包装するものでもなく、データのスケーラビリティを高い生産性で可能にするものでもない。BDAは、世界中のデータを駆使して企業に目に見える実益をもたらす。たとえば売上増を。

SaaSは、エンタプライズソフトウェアの新しい提供形式だった。それらはユーザ企業が即座にサインアップでき、統合化の費用を大幅に減らし、購入前の試用が可能であり、スケーラビリティがあり、同じサービスを複数のユーザが利用でき、従量制で課金された。クラウド革命の創始者ともいえるSalesforce.comは、クラウドによってCRM業界に変革をもたらし、さらにエンタプライズソフトウェアのあらゆるカテゴリーをSaaS化していった(人事に関してはTaleo/Successfactors、ERPではNetsuite、Webアクセス分析ではOmniture、などなど)。SaaSはビジネスソフトウェアの市場サイズを大きくし(導入コストが安いので中規模企業でも利用できた)、また大企業にはROIの向上をもたらした。でもSaaSには、ある重要なことができなかった。コアアプリケーションの機能性は、クラウド化以前とほぼ同じだったのだ。言い換えるとSaaSは、アプリケーションの機能性を革新するテクノロジではなかった。SalesforceはOracleのSiebelにも優るような画期的なCRMを企業に提供したわけではない。ただ、CRMの導入を容易にし、メンテナンスを安上がりにしただけだ。

消費者サイドのビッグデータは、よく知られている…それはGoogleであり、Amazon.comであり、Facebookだ。先日のCebitのキーノートでAmazonのCTO Werner Vogelsは、リコメンデーションを支える(根拠となる)だけの十分なデータがないときに、失敗が起こりやすい、と述べた。より多くのユーザがより多くのデータを核となるエンジンに注ぎ込めば注ぎ込むほど、アプリケーションは魅力と輝きを増し、お利口になり、価値を高める。今私たちは、エンタプライズBDAの始まりを目の前に見ている。そして、それが未来だ:

  • Linkedin (NASDAQ: LNKD)は、雇用や人材獲得の市場におけるBDAだ。LinkedInはユーザのコンタクトを孤立したコンタクトリストに収めるのではなく、いろんなユーザのコンタクトをネットワーキングし、ユーザとユーザを結びつけ、雇用者と人材を結びつける。LinkedInの新規ユーザになった者は、LinkedInのBDAスタックに信号を加え、雇用者はそうやってできる何百万ものプロフィールを利用できる。それは自企業だけの閉じた蛸壺ではない。その結果、小規模な専門企業の雇用者と大企業の求人部門とのあいだに、リーチの差がなくなる。
  • Bazaarvoice (NASDAQ: BV)は、ソーシャルな共有のためのBDAだ。BazaarvoiceはWeb全域から顧客のリビューを集め、その情報で複数のWebサイトをてこ入れする。従来のSaaS方式のやり方だと、個々のサイトのリビューを受け入れて公開するソフトを提供するだけだろう。BazaarvoiceはWeb全域からリビューデータを集めるので、一つの顧客サイトが製品を引きあげた場合でも正しいリビューが得られる。Bazaarvoiceは、すべてのセラー(sellers, 売り手)のリビューを比較できるデータベースを、Amazon.comに提供している。
  • Salesforce (NASDAQ: CRM)は、BDAがSaaSの未来だと理解している。WebモニタリングのRadian6や、コンタクトのJigsaw(今ではData.com)を買ったのは、企業のための強力なアプリケーションは、Web全体からその企業に関するソーシャルデータを集め、ネットワーク化されたコンタクト情報を営業陣に与えなければダメだ、と理解しているからだ。
  • 弊社BloomReachは、マーケティングのためのBDAだ。それは、次の100億ドルクラスのソフトウェアだ、と言われている。単にWebサイトを分析してこれまでなかったコンテンツを見つけ、それにより検索とソーシャルと広告の三者にまたがる収益をドライブしたり、ワークフローやコンテンツのリコメンデーションをサイトのオーナーに提供するだけでも今ならビジネスになる。しかし弊社はそれをせずに、Web全域の需要を分析/解釈して個々の顧客のためのWebコンテンツを軸にセマンティックモデルを構築し、ユーザにとってもっとも適切なコンテンツでWebサイトを動的に(リアルタイムに)増強する、というやり方を選んだ。AdobeのOmnitureはユーザ企業のデータをクールなSaaSアプリケーションでパッケージし、企業のためのマーケティングリコメンデーションを作る。弊社BloomReachは、個々の企業データではなくWebのデータを分析して、それをもとに、顧客企業のトラフィックと売上の増を図っていく。

BDAは、それと内容的に比肩しうるSaaSよりも、本質的に優れている。なぜならば、BDAには、SaaSのデリバリモデル(ソフトウェア提供形式)の利点がすべてあるだけでなく、集積するデータに備わっているネットワーク効果もあるからだ。ユニークなデータを個々の顧客のために有効利用すると、それは今後の時間の中でユーザとアプリケーションプロバイダの双方のためにネットワーク効果を作りだす資産となる。つまり今日では、企業内よりもその外のほうが、データ量が圧倒的に多いのだから、企業の社内データを分析とワークフローのためにリパッケージングするという考え方は、もはや古くさいのだ。

BDA企業は価値の作りだし方がSaaS企業と異なる。BDA企業のチームは、大規模システムや機械学習、データマイニングに強い人びとで構成される(弊社の協同ファウンダAshutosh Gargのように)。また、評価のされ方もSaaS企業と異なる。どちらも企業が顧客だが、BDAの提供物のほうが費用1ドルあたりで得られる価値が大きい。なぜなら、顧客が増えるということはデータが増えることであり、それによりすべての顧客へのサービスの質が向上する。市場はふつう、三つの測度でSaaS企業を評価する: 顧客の生涯価値(Customer Lifetime Value, LTV)…高いほうがよい、顧客獲得費用(Cost of Customer Acquisition, CCA)…低いほうがよい、成長率(Rate of Growth)…高いほうがよい。たしかに、SaaS企業は成長率が高い。しかしBDAはLTVが高く(顧客価値が高くて変動・入れ替わりが少ないから)、CCAが低い(ネットワーク効果があるため。LinkedInの新雇用者獲得費用を5年前と比べてみよ)。

BDA革命は、始まったばかりだ。それがCRMの二番煎じなら、営業部隊の生産性を追尾できないだろう。むしろ業界全体に亘るデータがあるからこそ、BDAは競合対策を助言できる。BDAがマーケティング自動化ソフト(Marketo、Eloquaなど)の二番煎じなら、見込み客の捕捉、生成、育成はできないだろう。むしろBDAは、つねにWeb全域を見るからこそ、より多くの見込み客を見つけ、惹きつけることができる。もしもBDAが財務アプリケーションの二番煎じなら、顧客企業の財務状況を調べるだけで終わるだろう。しかしむしろBDAは、顧客企業の財務状況を業界全体の動向と比べて、企業が自らをベンチマークし、ベストプラクティスを実行できるようにする。このように、今後はあらゆるカテゴリーのソフトウェアを、BDAがリードするだろう(その一部は既存のSaaSの適応や買収により)。

テクノロジの世界の通例として、次の新しいものが古いものを追いやることはない。OracleやSAPは依然として大企業だが、Salesforce.comは最新の巨大な200億ドル企業だ。そしてその次が、BDAたちだ。

BDAよこんにちわ。SaaSよさようなら。

〔訳注: この記事は著者のBDA企業の宣伝臭があまりに強いが、しかし本文中でも明記されているように、BDAはソフトウェアのタイプの概念、SaaSはソフトウェアの提供/利用形式の概念であり、したがって、どっちがどっちを駆逐するという関係にはない。BDAもその多くが、SaaSとして提供される。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))