スタートアップにとっての意思決定プロセス
編集部注:Uzi ShmiloviciはFuture SimpleのSEO兼ファウンダー。同社はBase CRMというサービスを展開している。
「絶対的な真実というものがないときには、私の考えを採用することにする」― Jim Barksdale(Netscape元プレジデント兼CEO)
スタートアップというものは、そのスタートアップを運営する人々の「意思決定」の集合体として存在するものだとも言える。資金調達を為すべきかどうか。どこから資金を入れるべきなのか。マーケティング戦略として何を選択すべきなのか。次に実現すべき機能は何か。誰を雇うのが正解なのか。常にこうした判断が求められることになる。
意思決定というものが重要であることは同意していただけると思う。ではより良い意思決定を為すためにはどうすれば良いのだろうか。多くの人が研究を行ってきた分野でもある。意思決定方法に関する本を全て読もうと思えば何年もかかってしまうことにもなるだろう。論文もたくさん出ているし、理論や学派というものも数多く存在する。こういったものをひとつひとつ勉強していこうと「意思決定」することもできる。但しその決定はとても良い意思決定であるとは言えないだろう。大事なのは「意思決定はデータに基づいて行われるもの」と理解することであり、それを組織構成員全員が肝に銘じておくべきだということだ。
データに基づく意思決定の重要性
この分野では非常に多くの論文が発表されているが、ひとつ非常に印象に残ったものがある。1979年に心理学者の故Robyn Dawesが発表したもので、「The robust beauty of improper linear models in decision making」というタイトルのものだ。難しげなタイトルだが、書かれていることはシンプルだ。正しいビジネス上の目的に沿って行われた意思決定は、専門家の為す直感的判断よりも常に優れるということが記されている。一般的に見て、不適切で、単純すぎて、愚かな意思決定モデルではあっても、理屈に従うことは直感的判断には勝るのだそうだ。
たとえば人材採用についてみていってみよう。新たに作ったポジションを務める人材を採用したいのだとする。誰を採用すべきなのかという完璧なモデルを作ろうと思えば、候補者のありとあらゆるデータを集めて分析し、さまざまなパラメータに基づく統計的比較を行うことができるようにする必要がある。これはGoogleが実施している方法だ。しかしこれは何千人もの人を雇うGoogleだからできることであって、スタートアップ企業にできることではない。
現実的には、何を主な判断基準にするのかを決めて、それに基づいて候補者を判断するためのシンプルなモデルを作ることになる。ここで生み出されるモデル自体はシンプルなものだが、しかし採用を考えているポジションの役割として、いったい何が重要なことであるのかということを分析的に考える必要が生じる。それこそが重要なことなのだ。こうした思考が主観的な偏見を取り除き、そしてより良い意思決定へとつながっていくことになる。ここに「データに基づく意思決定」の大事なポイントがある。
意思決定プロセスを透明化する「体系化」
Dawesの論文の内容は、スタートアップ組織の他の面にも応用できる。判断を必要とするすべてのものは「体系化」して「モデル化」することが可能なのだ。これを意識することで、あらゆる事象やプランについて「成功するために大事な要因は何か」を考えることになり、これがすなわち組織を「成功」に近づけていくこととなる。
先にも記したように、スタートアップ組織であれば、さほど膨大なデータを所有しているわけではないだろう。しかしたとえばネットワーク上のデータを活用することもできる。たとえばマーケティングプランを考えている際に、フリーミアム・モデルにおけるコンバージョンレートがどの程度のものなのかと考えたとしよう。そうした内容でもネットワーク上で回答を見つけることができる。但し、ネットに回答があるからと安閑とするのではなく、正確な予測を打ちたて、望ましい結論を得るための正しい結論を下すために、最初からきちんとしたデータを集めようと努力することが大切だ。
Jack Dorseyと推論チーム
マーケティング戦術のひとつに「before and after」というものがある。生じる結果に着目している点で、確かに役立つこともある。データに基づく運用を志そうとするスタートアップの参考になりそうなのは、たとえばJack Dorseyのケースだ。彼もデータ重視がより良い結果に繋がると理解しており、Square社内でデータ分析に基づく「推論チーム」を作ったのだ。「Twitterの最初の2年間は、まったく盲目状態で空を飛ぶようなものでした。判断はすべて直感に基づいて成されていたのです。そのような状態にあったSquareで、まず最初に行ったのは管理用ダッシュボードを作ることでした。すべてを記録して、そしてすべての評価を行なっていくという規律を作ったのです」とDorseyは言っている。
さあ、はじめよう
データの収集、分析、データに基づく推論などは、はやく始めればそれだけ効果が出るのも早くなる。1年もたてば、自分自身の行動に満足する結果が得られるようになることだろう。
意思決定に関する理論に興味があるのなら、ぜひともプロスペクト理論について読んでおくと良いだろう。ダニエル・カーネマンとエイモス・トベルスキーの構築した理論で、カーネマンは2002年にノーベル賞を受賞してもいる。意思決定プロセスにおいて大切なことを教えてくれるし、また陥りがちな認知バイアスについても非常に参考になる検証がなされている。
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(翻訳:Maeda, H)


