モバイル支払いの本当のチャンスを握るのは、モバイル・ショッピングだ
編集部注:本稿のライター、Bill Readyはオンラインおよびモバイル支払いサービス会社、BraintreeのCEO。
スマートフォンを使って小売店で支払うことに特化したモバイル支払いサービスのニュースが、毎日見出しを飾っている。Paypal、Google、その他業界の巨人たちが新しい店内支払いソリューションを提供しようと競っている。WalmartやTargetなどの大規模小売業者は独自のモバイル支払いソリューションを検討中だ。NFC(近距離無線通信)がモバイル支払いの主流になるかという議論も紛糾している。しかし、マスコミや業界の巨人たちの努力にもかかわらず、小売店でのモバイル機器を使った支払いは驚くほど普及していない。これは主として、これまで業界の巨人たちが提供してきたソリューションが、消費者や商店主の抱える日々の問題を解決しないからだ。レジでカードをスライドさせるより簡単な方法は殆ど存在せず、店内の支払いシステムは店にとって電話と同じくらい簡単でどこにでもある。
しかし、モバイル・コマースには大きなチャンスがあり、それは消費者と商店の両方にとってひどく苦痛な部分なのだが、業界のビッグプレーヤーたちはまともに対処できていない。そのチャンスとは、モバイルデバイス上のEコマース、すなわちMコマースだ。Mコマースは徐々に立ち上がりつつあり、消費者はモバイルで情報を調べたり検討するのが好きなだけでなく、購入もすることが証明されている。しかし、数字を見る限りモバイル機器における購入体験には、改善の余地が著しく残っていることがわかる ― 消費者にとってのショッピングと支払いプロセスの最適化が主な項目だ。
2011年歳末商戦のオンラインショッピングでは、モバイルショッピング行動の著しい成長が見られ、モバイル機器によるトラフィックと購入の両方が前年同期の2倍を記録したことが、 IBMの調査でわかった。年末商戦期間中、小売業者サイトの全オンライン利用の14.6%がモバイル機器によるものだった(前年同期は5.6%)。モバイル機器経由の売上は前年12月の5.5%から11%に上昇した。消費者がスマートフォンを使って、小売店ウェブサイトでショッピングすることに慣れてきているのは明らかだ。
しかし、このモバイルショッピングの規模は、その潜在力をはるかに下回っている。 Flurryの調査によると、モバイルでのオンライン総滞在時間は、従来型のデスクトップやノートパソコンからの利用をすでに超えている。これは、モバイルのブラウザーやアプリの機能がここ数年で飛躍的に向上したからによる部分が多い。消費者がモバイルで過ごす時間の方が従来型機器よりも多くなれば、究極的にはショッピングもそうなるだろう。とにかくモバイルの購入体験を、現在のデスクトップのレベルに追いつかせる必要がある。今あるチャンスは、モバイルのショッピング体験を消費者にとってできる限り簡単にすることだ。これは、売上を伸ばし、モバイルに最適化されていない購入体験に不満を感じた消費者が、購入を取りやめる回数を減らすはずだ。
Eコマース会社および支払いサービスが、モバイル購入を改善してMコマースのチャンスを掴むために、今すぐとりかかれる項目を4つ挙げる。
1. ワンクリック・チェックアウト:Amazonが実証したように、オンラインショッパーにとってワンクリック・チェックアウトを超える体験はない。消費者と最終取引との間に段階を挟めば挟むほど、脱落のリスクが増える(多くの場合これはその消費者が二度と戻らないことを意味する)。これは、モバイルデバイスではクレジットカード情報の入力がはるかに面倒であることによって増幅される。Eコマースの提供者は、カード保管庫サービスを利用して、ウェブでもモバイルでもワンクリック・チェックアウトを可能にすべきだ。
2. モバイルのセキュリティー:セキュリティーはノートパソコンでも携帯電話でもショッピングにおける重要な課題だ。しかし、消費者にとって携帯電話をなくす方がノートやデスクトップパソコンより可能性は高く、パスワードで守られていることも少ない。消費者は、もし自分の携帯電話をなくしたり盗まれたりした時にもクレジットカード情報が安全であることを確認しておく必要がある。カード情報をユーザーが入力すると同時に暗号化する、あるいはワンクリック・チェックアウトを使ってモバイル機器にカード情報を入力しなくてすむ方法をとれば、落としたり盗まれたりした時にもカード情報を盗まれない。
3. 処理スピードの向上:スピードは非常に重要だ。とくにモバイル機器の限られた帯域幅では。小売業者のプロセスがモバイルに最適化されていないと、現在の消費者には耐えがたい遅くて苦痛な体験のために売上を逃がす可能性が高い。われわれが行ったベンチマークの結果、多くの支払いプロバイダーにおいて、支払いプロセスだけでもモバイル機器とサーバー間で複数の往復を必要としていることがわかった。中には支払い処理だけで最大16往復するものもあった。購入までを効率よくサーバー交信1回で行う支払い処理を探そう。さもなければ、消費者は非常に長い時間待たされた挙げ句諦めてしまうだろう。
4. モバイル・ショッピング体験に完全最適化したウェブサイト:利用者が画面をスクロールしたり拡大縮小しないと購入できないとすれば何かが間違っている。モバイルに完全に最適化したショッピング体験がないと、小売店は携帯電話からの客を逃すリスクを抱えることになる。ユーザーは、モバイルに最適化していないサイトに遭遇すると別の最適化されたサイトに行くことが増えてきている。最適化されたサイトは日に日に増えている。良いモバイル・ショッピング体験とは、小さい画面に最適化され、タッチスクリーンを活用し、できるだけ少ない手順で高速にチェックアウトできるものを言う。
しかし、モバイル・ショッピングはウェブ・ショッピングを侵食しないのか?
複数の商店主から、彼らにとってモバイルへの最適化は優先課題ではない、なぜなら消費者が購入を完了するにはモバイルからノートやデスクトップパソコンに切り替えればいいだけだから、という話を聞いた。これは一見完璧に論理的な仮定に見えるが、現実の証拠はこれを支持していない。モバイルでのウェブ閲覧は、デスクトップのウェブ閲覧を侵食しなかった。従来型のオンライン閲覧は今でも伸びているが、消費者がパソコンから離れている余分な時間にモバイルでウェブを見る時間が膨大に増えたために、モバイルが従来型ブラウジングを目立たなくしている(道や店の中でモバイル機器を見ながら歩いている人をよく見かけるだろう)。つまり、モバイルは購入のチャンスを広げている。これをオフライン・ショッピングになぞらえるなら、モバイル機器はユーザーの歩くあらゆる街角に店先があるようなものだ、モバイル・ブラウジングの常時オン常時利用可能な性質によって。
本当のチャンスを追求せよ
これまでのところ、モバイル支払いに関する議論は、実際には存在していない問題にまつわるものだった。クレジットカードより簡単な支払い方法は殆どない。「携帯電話をクレジットカード代わりに使う」技術が本格的に普及しない理由はいくつかあるが、最大の理由は、まだ必要ないのに変更を強要しているからだ。
一方モバイル・ショッピングあるいはMコマースは、本物であり急速に成長している。2011年のPew Researchの調査によると、米国スマートフォン利用者の25%が、ウェブ閲覧の殆どをモバイルで行っていると回答した。本当のチャンスは、これらの閲覧者 ― 日々増え続けている ― を、購入者へと転換することにある。
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(翻訳:Nob Takahashi)


