ラジオの復活-オンライン対応のジレンマの先には何があるのか

編集部注:Mike Agovinoは、Triton Digitalの共同設立者兼COO。この会社は7,000局以上と提携してメディア産業(とりわけラジオ)にアプリケーション、サービス、コンテンツを提供している主要事業者である。Agovinoは25年におよぶ役員としての経験があり、Katz Radio and Katz Interactiveの社長、Clear Channel Radio SalesのCOOそしてInterep National Radioの共同COOを歴任してきた。彼は、放送とニューメディアの接点において事業を提供している業界のイノベーターとして知られている。
昨年実施されたPandoraのIPO以降、オンラインオーディオの世界では、同じようなストーリーが繰り返されてきた。オンラインオーディオの利用者は増加を続けているが(Pandoraのユーザー数は2011年4月から2012年4月で倍増している)、これまでの売上成長(これも急激ではあるが)は収益を生むには至っていない。これは、伝統的なラジオの世界とは異なり、オンラインラジオにとって聴衆は費用発生源だからだ。しかも、個人利用者が楽曲を聴くたびに高額の実績ロイヤルティが発生する。ユーザーがモバイル機器や車内で音楽を聴く回数が増えると、事業を進めていくにつれて支払いも急増することになる。
伝統的なラジオ局にとっては、catch-22的ジレンマによりデジタル化へのシフトは緩慢なものであった。約1世紀もの間、ラジオ放送は実績ロイヤルティなしに運営されてきた。しかしながらこれらのブランドは、オンラインリスナーからの膨大な実績ロイヤルティに直面している。現在に至るまで、オンライン音楽の再生(それがピュアプレイか放送であるかに関わらず)で利益を上げるのは不可能であった。ならば、ローカル局にとってコンテンツを流すのにどのようなモチベーションがあるというのか?
デジタルの「脅威」
1年前に私は、伝統的なラジオ局がデジタルラジオを利用可能な資産ではなく競争相手としてみていることを指摘した。こうした感情は、概ね、現実に競争相手と考えられているPandoraやMOG、Spotifyほか無数のデジタルサービス事業者などの、デジタルに対象を限定した音楽サービス事業者に起因している。デジタルのみの音楽サービス事業者は確かに伝統的なラジオにとって脅威とみなされている。なぜならこれらの事業者はリスナーが求めるサービス、すなわちさまざまな機器でより多くの好きな音楽が聞け、コントロールができて広告が少ないサービスを提供しており、必要不可欠な公共サービスになっているからだ。
伝統的なラジオ局がデジタルを脅威から事業機会にするうえで重要なのは、ラジオ局が最も得意なことをやることだ。これには、楽曲のキュレーション、アーティストとの交流、イベント、プロモーションなどの地域に根ざしたサービスを通してコミュニティ意識を構築することなどがあり、これらを優れたユーザーインターフェースを持つデジタルチャネルを通して提供することだ。課題は、いつものことながら、ロイヤルティ構造に直面するなかで投資からのリターンをいかに確保するかである。
しかし、状況は変わりつつある。
デジタルの未来を取り入れる
全米最大のラジオ会社で約850局を所有しているClear Channelは、最近ロイヤルティの力学を変え、伝統的なラジオ局に対してデジタル化への道を用意した。同社は今週、Big Machine Label Groupとの提携を発表したが、これは傘下の従来型ラジオ局が、オンライン配信だけでなく放送分のロイヤルティについても初めてレベニューシェアリング形式で料金を支払うというものである。この提携合意の詳細については開示されていないものの、私見では、この合意は、かつて放送事業者や業界団体が一音楽レーベルから引き出した積極的参画の度合いとしては、過去に公表されたいかなる事例をも超えるものだろう。
ほとんどの業界では、最大手事業者がこのような大胆な行動を取るのは稀だろう。しかしながらClear Channelは、とりわけBob Pittmanの入社以降、多くの人が認める以上に業界のイノベーターとして事業運営されてきた。Clear Channelは1年でほぼオンラインの聴衆をほぼ倍増させ、同社のiHeartRadioアプリ(iPhone用)をラジオ内でも何度も頻繁に紹介してきた。
事業ポートフォリオのなかで高い評価がなされており最大級の料金請求型の音楽ステーションを有するがゆえに、Clear Channelは他の事業者よりも得るものも失うものも多いと思うかもしれない。しかしいずれにせよ、彼らは行動を起こした。それが徐々に動き出すテストとなるか、倒れる木のなかで最初の一本になるか、先行きはまだ分からない。他社は追随するだろうか?個人的にはそうあってほしいと願う。
重要なプレイヤーでいられるかどうかは、イノベートするか倒れるかの闘いだ。伝統的なラジオは死んでいないが、その将来はデジタルと無縁ではいられない。オンライン化するための鍵となるのは、デジタルの未来を早期に現実のものにする音楽業界との協働である。
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