ドローン最大手DJIが米商務省の禁輸リスト入り、ドローンによる監視は人権侵害
最近、米国政府がDJIを取り締まろうとしているという報道が増えていたが、米国時間12月18日、商務省はDJIを「エンティティリスト」(禁輸リスト)に加えることになった。ロイター通信とDrone DJは、州当局者との電話会議に基づいて第一報を報じた。今回加わる77の企業のリストもある。
このニュースは、DJIにとって相当大きな打撃だ。設立14年になる同社は、ドローンの分野で完全に支配的な勢力だった。ここ米国では、推計で市場の77%を握っている。
米国と中国の間の緊張の高まりは、合衆国におけるDJIのプレゼンスにとって長年、不吉な懸念だった。特に問題とされたのが、ドローンの監視能力だ。消費者向けドローンで大きく成功したDJIは、産業用と政府向けのドローンとしても広く利用されている。それどころか同社のエンタープライズ製品の中には、政府向けを明記した製品系列もある。
DJIは、リストに加えられた数十社のひとつ。同じく重要な企業がチップのメーカーであるSMICだ。米商務長官のWilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏は、リスト公開時の声明で激しい言葉で非難している。
中国の、その国境の中と外における腐敗と威圧の振る舞いは、米国の安全にとって有害であり、同盟諸国と協調国の主権を損ない、人権および民族的宗教的少数者集団の尊厳を侵犯している。商務省は、オープンで自由な市場原理に基づいて開発生産された米国の技術が、有害で不正な目的で使われないことを確実にするために行動している。
中国は、強制労働やDNAの採取、および網羅的な監視などの不埒な行為を活発化して、新疆などの地域の住民を抑圧している。過去2年あまりにわたり当該政権は50近い企業を、中国共産党の少数民族弱者に対する卑劣な攻撃を支持した廉でエンティティリストに加えてきた。今回の新たな追加により我々は、チベットなどを含む中国のそのほかの地域と、それらに対する権威主義的な政権が行っている行為にも、これらの原則を適用する。
昨年商務省はHuawei(ファーウェイ)とその関連企業数社をリストに載せ、ファーウェイの力を大幅に削いだことで注目を浴びた。とりわけ大きな制約は、同社がAndroidなどの米国の重要な技術にアクセスできなくなったことだ。ファーウェイは独自のオペレーティングシステムを開発する道を選んだが、それはまだ同社の安定路線になっていない。
米国政府や州の省庁にファーウェイの技術の利用を禁ずることに対してはさまざまな議論があったが、リストの今回のアップデートはさらに徹底的だ。DJIはここ1年、事態のこのような変化に対し身構えてきた。同社は大量の人と時間を費やして、米議会へ働きかけた。また、新大統領が就任する1月20日以降、この禁令の形がどう変わるのかについても、さまざまな憶測がある。
意外なのは、「大規模な人権侵害」を論ずる商務省声明や報道の中にDJIが登場することだ。同社が、「ハイテクによる監視」の文脈で取り上げられていることも、同じく意外だ。
国務省や国防総省など、テクノロジーのエンドユーザーによる検査委員会(ERC)は、AGCU ScientechとChina National Scientific Instruments and Materials(CNSIM)、DJI、そしてKuang-Chi Groupの計4社を、米国の外交政策の方針に反する活動により、リストに加えることを決定した。とりわけこれら4社は、遺伝子の採取および分析の乱用、またはハイテクによる監視、および世界中の抑圧的な政権を支援する中国による製品輸出の便宜を図ることにより、合衆国の外交政策の主たる関心に反している。
現在TechCrunchではDJIにコメントを求めている。
DJIと競合するSkydioの声明は、今回の事態を祝っているかのようだ。
DJIが忌まわしい人権侵害を支援した嫌疑に基づき、本日DJIがエンティティリストに加えられたことは明確なメッセージを告げている。DJIとは価値観を共有できず、信頼できないということだ。DJIはすでに、米国内と世界中で集めた機密情報の中国共産党との共有義務、という重大なセキュリティリスクを認めている。
そして今回わかったのは、DJIが長年、新疆地方のウイグル族の抑圧を支援して利益を得てきたことだ。これは人権侵害の、世界でもっとも劣悪な実例である。本日のニュースはまた、市場にも明確なシグナルを送っている。人権侵害者であるとわかっている者たちとビジネスをするときは考え直せと。
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カテゴリー:ドローン
タグ:DJI、エンティティリスト、アメリカ
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(翻訳:iwatani、a.k.a.hiwa)