アップルがApp Storeの検索タブに新たな広告枠を導入

Apple(アップル)は、競合他社の広告ビジネスを取り締まると同時に、開発者がApp Store(アップストア)に広告を出すための新しい方法を導入する。これまで開発者は、ユーザーがApp Storeで検索した時に、特定のキーワードを使ってアプリを宣伝することができた。例えば、ユーザーが「タクシー」と入力すると、検索結果の一番上にUber(ウーバー)の広告が表示されるといった具合だ。しかし、新たに導入された広告枠では、ユーザーが検索を行う前に広告を表示させることが可能になる。これによって、より多くのユーザーにアプリを知ってもらうことができる。

この新たな、より目につく広告枠は、アップル製デバイスの所有者から毎月数百万ものアクセスがあるApp Storeの「検索」タブに表示される。検索ボックスの下には、App Storeの最新トレンドを紹介する「見つける」という欄と、おすすめのアプリやゲームを紹介する「あなたにおすすめ」という欄の2つのセクションがあるが、広告は後者のおすすめアプリの最上部に表示される。

アップルが「Search tabキャンペーン」と呼ぶこの新しい広告掲載は、同社のSearch Ads Advancedサービスの一環としてのみ利用できる。広告は開発者(広告主)がApp Store製品ページにアップロードしているアセットを使用し、アプリ名、アイコン、サブタイトルを表示する。そのため、他のApp Store広告のようにキーワードを登録する必要はなく、Creative Setsは利用できない。

画像クレジット:Apple

従来のSearch resultsキャンペーンと同様に、Search tabキャンペーンには最低支出額は設定されていない。開発者は予算に応じて、いつでもキャンペーンを開始、停止、調整することができる。広告の価格は、CPM(Cost Per Thousand Impressions、インプレッション単価)モデルに基づいて決まり、支払い可能な最大額を設定する。実際のコストはセカンドプライスオークションで決定される。つまり、入札した額に最も近い次点の入札額に基づいて支払い金額が計算される。インプレッションは広告の50%以上が1秒間表示されるたびにカウントされることに留意するよう、アップルは特記している。

アップルの広告事業拡大に向けた決定は、iPhone用OSの最新バージョンとなるiOS 14.5が配信開始となるタイミングに合わせて計画されたものだ。同社はiOS 14.5で導入された「App Tracking Transparency(ATT、アプリのトラッキングの透明性)」という機能を通じて、ユーザーのデータを無断で追跡するアプリの排除に努めている。iOS 14.5にアップデートすると、各アプリを起動する際に新たなポップアップボックスが表示され、これまでユーザーの同意なしにユーザー情報を収集していたアプリは、これらの情報を収集したりデータブローカーやその他の第三者と共有するための許可をユーザーに求めなければならない。ユーザーはいつでも、iOSの「設定」から、アプリごとにトラッキングをオンまたはオフにすることができる。

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このアップルの変更は、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)に代表される3500億ドル(約38兆円)以上のデジタル広告業界を揺さぶった。Facebookはこの変更による影響から、これまで多額の費用をかけずに潜在的な顧客にリーチできる、高度にターゲット化されたパーソナライズド広告に依存してきた中小企業が打撃を受ける主張している。一方で広告主は、アップルの変更が広告主の利益を犠牲にして同社に利益をもたらすものだと指摘している。

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これらに対するアップルの回答は、一貫して「消費者のプライバシーを保護するためにこの変更が必要である」というものだった。人々は「自分のデータがいつ他のアプリやウェブサイトで収集・共有されているのか」を知る権利があり「それを許可するかどうかを選択できるようにすべきだ」と、アップルは言っている。

Flurry Analytics(フラーリー・アナリティクス)の初期のデータによると、iOS 14.5のリリース後、追跡されることを「許可」する方を選んでいるユーザーは約11%に過ぎない。新規ユーザーの獲得を目指すアプリパブリッシャーにとって、この新しい広告枠は、ATT導入前と比べても魅力的に見えるかもしれない。

アップルが新しい広告枠の導入を計画しているということは、2021年4月にFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)によって報じられた。同紙はこの変更が最終的に、アップルに金銭のみならず、支配力ももたらす可能性を指摘している。これまで、App Storeで目立ったアプリには、新規ユーザーが殺到し、開発会社の評価を高めることがあった。ユーザーがアプリを見つけ、次にヒットするアプリが選ばれるという、双方の観点における影響力を、アップルはサードパーティから自社と自社のApp Storeに取り戻したいと考えているのかもしれない。

カテゴリー:ソフトウェア
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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)