フォードが「実質的にすべて」の車載コンピューターのソフトを無線でアップデートできる機能を発表
「モノのインターネット(IoT)」は、ますます広がっている。Ford Motor Company(フォード・モーター・カンパニー)は4年前に自社の車両とAmazon(アマゾン)のスマートホーム機器との統合を発表したが、さらにワイヤレスソフトウェアアップデートで車載ソフトウェアを強化し、音声アシスタントのAlexa(アレクサ)をクルマに搭載することを発表した。
フォードが「Power-Up(パワーアップ)」と名づけた無線ソフトウェアアップデートは、車載インフォテインメントシステムに特化したものではなく、フォードの新型車に搭載されているコンピューターモジュールの「実質的にすべて」をアップデートできる機能を持つと、同社は米国時間5月13日に発表した声明で述べている。フォードによれば、Power-Upは同社の上位モデルに搭載されている80以上のコンピューターモジュールをアップデートできるという。フォードは2028年までに、この無線アップデート機能とAlexaを搭載した車両を3300万台製造することを計画している。
フォードは明らかに、今回の発表によって株主や顧客が、同社を技術的に先を行く自動車メーカーであると見なすようになって欲しいと願っている。米国時間5月11日に行われたメディアブリーフィングでは、同社の幹部の1人がフォードを「テクノロジーカンパニー」と表現していたほどだ。
フォードのエンタープライズコネクティビティ部門で事業運営責任者を務めるAlex Purdy(アレックス・パーディ)氏は「データは新時代の石油に相当すると我々は考えています。なぜなら、データは将来の電動化に不可欠なものであり、お客様との常時接続の関係を可能にするものだからです」と語った。
その「データは新時代の石油」というセリフは、何も新しいものではない。Intel(インテル)の元CEOであるBrian Krzanich(ブライアン・クルザニッチ)氏は、2016年にまさにそのことを宣言していた。新しいかどうかはともかく、データは自動車メーカーにとってますます貴重な資源と見なされている。
この新しいソフトウェアアップデートによって、ディーラーは故障のために出向く必要性が減り、ハードウェアの修理やメンテナンスなど、より収益性の高いサービスに注力できるようになるだろうと、パーディ氏は述べている。ソフトウェアのアップデートは多くの場合、ドライバーがほぼ何もしなくても行われる。システムの再起動が必要なアップデートは、ドライバーがそのスケジュールを設定することも可能だ。
ドライバーは、車両に搭載されているAlexaアシスタントを使って、エンジンの始動 / 停止、ドアのロック/ アンロック、フロントガラスのデフロスター、電話、音楽の再生などを音声操作で行うことが可能になる。また、Alexaスマートホームデバイスを所有している人なら、家とクルマのシステムを接続することで、例えば、帰宅した際に車道から車庫までの私道に入ったところで、車内から自宅の照明を点灯させることなどができる。フォードは、2021年中に米国とカナダで70万台の車両にAlexaソフトウェアを搭載することを計画しているというが、他の国での展開については言及していない。
顧客からアンケートを取る時代は終わった。新しいソフトウェアのエコシステムによって、フォードは自社の車両の所有者がどのようにクルマを使っているかというデータを得ることができる。「ユーザーが好む機能はさらに強化し、好まない機能は排除することができます」と、パーディ氏はいう。フォードは、すべてのドライバーに3年間は無料でAlexaを利用できるようにしている。このことは、同社が顧客の行動に関する非常に価値のある膨大な量の情報を、Alexaの利用から得られる可能性があることを示唆している。
フォードとAmazonは、今後6年の間に新機能や商用サービスを共同で開発していく。それらは2021年秋より、まずはフォードのピックアップトラック「F-150」、電気自動車「Mustang Mach-E(マスタング・マックE)」、SUVの「Bronco(ブロンコ)」と「Edge(エッジ)」、大型ピックアップトラック「Super Duty(スーパーディユーティ)」の顧客に、Power-Upソフトウェアアップデートを通じて提供される。フォードはその後、残りのモデルにも「順次導入」していき、最終的にはフォードが販売するすべての新車で利用できるようにする予定だが、この目標を達成するには、何年もかかることをパーディ氏は認めている。
フォードのPower-Upソフトウェアアップデートでは、高速道路でハンズフリー(ハンドルから手を放してもよい)走行を実現する機能「BlueCruise(ブルークルーズ)」も提供されるが、これを利用するためにはオーナーはアップグレード料金を払う必要がある。ドライバーは北米の高速道路の許可された区間でのみ、この機能を有効にすることができる。将来的には使用可能な高速道路の区間を増やしたり、Tesla(テスラ)のAutopilot(オートパイロット)のように、ウインカーをタップすると自動的に車線を変更するLane Change Assist(レーン・チェンジ・アシスト)や、道路のカーブやラウンドアバウトで自動的に速度を調整するPredictive Speed Assist(プレディクティブ・スピード・アシスト)を追加したいと、フォードは述べている(ただし、これらの機能はドライバーがハンドルに手を置いておかなければならない)。
フォードは2021年2月、Google(グーグル)と6年間のパートナーシップを結び、ドライバーにAndroid(アンドロイド)アプリやサービスを提供することも発表している。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford、アップデート、Alexa、自動車、電気自動車、IoT
画像クレジット:Ford
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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)