Discordが新機能を発表、音声イベントのポータルとなる「Stage Discovery」機能や有料チケット制の導入など

Discordを初めて使う人は、延々と表示される広告が一切ないことにとまどうかもしれない。Discordでは、すべてのアクションが目的ごとに設けられた専用の「サーバー」で行われているが、誰もが簡単にこれらのコミニティ遭遇し、飛び込むことができるようにしたいと、同社では考えている。

Discordは2021年3月下旬に、Clubhouse(クラブハウス)風の音声イベントルーム「Stage Channels(ステージチャンネル)」を開設した。これに続き、6月にはそれらのイベント(カラオケや読書会)を発見しやすくするための新たなポータルとなる「Stage Discovery(ステージディスカバリー)」と呼ばれる機能を追加し、現在開催中のクールなコミュニティに誰もが参加できる方法を導入する予定だ。

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Discordのプロダクトマネージャーを務めるRick Ling(リック・リン)氏によると、Stage Channelはこれまでのところ高い人気を得ており、これらのイベントが新しいユーザーをプラットフォームの中心であるコミュニティに呼び込むための入り口になることを、同社では実感しているという。

「私たちが目指しているのは、単に音声による会話に参加したり離脱したりできるようにすることではありません」と、リン氏はプレス発表で述べた。近いうちに、サーバーは公開イベントをリストアップできるようになり、誰でもチェックして参加できる。また、Discordではこの新しいStage Discovery機能を、注目に値するパートナーとともに開始するということもほのめかしている。

画像クレジット:Discord

Discordは他にもいくつかの新機能を準備している。会話のスレッド表示は2021年の夏に導入される予定だ。また、有料チケット制の音声イベントをテストするパイロットプログラムも開始される。この機能は、これまでDiscordではお金を稼ぐことができなかったクリエイターにとって大きな恩恵となる可能性があり、ターゲット広告を導入する気がないこのプラットフォームにとって重要な追加収益源となる。

これについて、Discordは明らかにClubhouseを参考にしているようだ。イベントの発見はClubhouseのすべてだが、Discordの関心事をベースにしたコミュニティの深い泉は、新参企業が提供できるものをはるかに超え、Discord自身の体験を押し上げることにつながる。5年前から先行しているDiscordは、若い世代から広くブランド認知されており、1億5千万人の月間アクティブユーザーのほとんどは、Z世代の中核的な18~24歳だ。

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DiscordはClubhouseと競合する必要はまったくない。多くの面において、Discordの方が先だったのだ。Discordは、他の多くの企業と同じように、Clubhouseからいくつかのスマートな機能を盗用したかもしれない。しかし、Clubhouseのダウンロード数は急激に減少しており、このアプリはDiscordや他のもっと定着しているソーシャルネットワークに対抗できることを証明する必要があるだろう。

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Discordの次なる進化

Stage Discoveryは、Discordにとってちょっとした新しい試みとなる。従来はライブイベントをチェックするためには、まずサーバーに参加しなければならなかった。Discordはコミュニティベースのプラットフォームであるため、あるトピック(例えば特定のTwitchストリーマーとか)に興味を持った人は、他の場所から直接そのサーバーに参加することが多い。Discordには、いくつかの発見・検索機能があり、ユーザーは「Discover(発見)」タブで、人気のあるサーバーや注目のパブリックサーバーを検索することができる。だが、それは比較的簡素な機能でしかなかった。しかし、この「発見の場」を拡大することで、Discordは、このアプリを知らない人や、ゲーマーのためのボイスチャットユーティリティとしか思っていない人を多く惹き付けることができるようになるだろう。

Discordの新しいStage Discovery機能は、ホームタブに表示され、ライブ音声イベントの一覧を提供するする。この機能の真の狙いは、これらのイベントが新しいユーザーをもたらし、イベントよりも多くの活動が行われている活発なコミュニティにつなげることにある。ユーザーは自分の友人が参加している音声イベントや、自分が所属しているサーバーが主催しているイベント、そして自分が接続していない他のライブイベントを知ることができる。

Discordプロダクトマーケティング部門で広報を務めるJesse Wofford(ジェシー・ウォフォード)氏は、TechCrunchに次のように語った。「結局のところ、やはりこれはコミュニティへの入り口であり、コミュニティに参加するための方法なのです」。Discordは誰かを無限のスクロールループに誘い込もうとしているのではなく、活気あるコミュニティとユーザーを結びつけることを目的としたプラットフォームとして知られているということを、ウォフォード氏は強調した。

Discordはまた、6歳の誕生日を記念し、ブランドを少し整えることにした。ロゴの配色を明るくし、コントローラーを擬人化した紫色の(Discordはこの色をblurple[ブループル]と主張しているが)愛すべきキャラクター「Clyde(クライド)」に少し手を加えた。同社によれば、遊び心を維持しながら、しばらくこのアプリを使っていなかったような人たちにも「より包括的で歓迎される」ビジュアルアイデンティティにしたかったという。

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間もなくディスカバリー機能が大幅に強化されるものの、Discordの製品哲学は変わっていない。同社創業者でCEOを務めるJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏は「フィードも、いいねも、バイラルになれる方法もありません」と語り、Discordは最初からコミュニティの構築を念頭に置いて設計されたものであると付け加えた。

Discordは最初から歓迎されていたわけではない。このアプリは常にゲーマー向けに提供されてきたが、Heather Heyer(ヘザー・ヘイヤー)氏を死亡させたシャーロッツビルの集会の主催者たちを含む、白人至上主義者たちの避難所でもあった。Discordは他の主なソーシャルプラットフォームのように憎悪を助長していると非難されるような悪評をほとんど避けることができたものの、それほど遠くない過去には、危険な極右過激派がDiscordで繁栄していたことは事実だ。

Discordは2017年からネオナチなどの危険なコミュニティを根絶し、2021年現在にはすっかり状況を変えることに成功している。現在、社内の15%がトラスト&セーフティチームに属しており、ユーザーの保護やコンテンツモデレーションのポリシー策定に取り組んでいる。Discordは当初からゲーマー向けに作られていたが、最近では視野が広がり、新型コロナウイルス感染症流行の際には、どんなに孤独と戦うために役立ったかという話も、ユーザーから聞けるようになった。

この会社の野心は、最終的にはゲームコミュニティという枠を超えている。Instagram(インスタグラム)の広告だらけのソーシャルフィードや、Twitter(ツイッター)の脳みそが溶けそうな無限ループと違って、Discordは依然として楽しく使うことができる。その使い勝手の良さは、おとり商法のためというわけでもないようだ。プレミアムプランの「Discord Nitro」やその他の有料特典からの収益は急速に伸びており、同社ではターゲット広告を導入する計画はないという。

Discordがパンデミック時代に行った非ゲームコミュニティ(音楽家や勉強会、超現実的な空想野球リーグなど)にアピールを拡げるための機転の利いたキャンペーンは、成果を上げているようだ。Discordのユーザー数は爆発的に増加しており、賢明な新機能が順調に追加されている。会社にとってもユーザーにとっても先行きは明るい。このように全体が収斂することは稀である。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Discordボイスチャット音声ソーシャルネットワーク

画像クレジット:Discord/Eric Szwanek

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)