米大統領選挙の夜、バイデン氏と同じくらい大きな勝利を勝ち取ったVerge Aeroのドローン
2020年は非常に長く感じられたが、今回の大統領選挙もまさにそれを体現していた。第46代大統領を指名するための統計調査プロセスは5日間にもおよび、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏が最終的にデラウェア州ウィルミントンで壇上に立ち受諾演説を行ったとき(The New York Times記事)、多くの人々は疲労と高揚感に満たされていた。本来ならこの演説はこの夜最も記憶に残るものとなったはずだ。あのドローンショーさえなければだ。米国とバイデン氏自身の両方を驚嘆させ、驚く同氏の顔がすぐにミーム化されたあのショーだ。
この愛国的なショーは、フィラデルフィアに拠点を置く従業員わずか6名の小規模なスタートアップVerge Aero(ヴァージエアロ)によるものだ。Philadelphia Eagles(フィラデルフィア・イーグルス)やMicrosoft(マイクロソフト)、そして今回は次期大統領バイデン氏のキャンペーン勝利の式典とかなり大きなクライアントを取り込んでいる。Verge Aeroはライトショーエンターテイメント用に特別に設計されたソフトウェアとドローンを使用して、印象的なショーをより身近なものにするという点で市場をリードしただけでなく、自宅で見ていた多くの人々に最新の空中デザインの精度の高さを見せつけることに成功した。
同社CEOのNils Thorjussen(ニルス・トールユッセン)氏は照明ソリューションの開発経験(LSI Online記事)を持つ業界のリーダーであり、ドローンライトショーのプロセスを簡素化して完成させるためにチームを率いて3年間を研究開発に費やしてきた。すべてを自社で製造したことで、大規模イベントにふさわしい実行性と手軽さを備えた完全統合型システムの構築を実現した。デザインソフトウェアとカスタマイズされたドローンを併用することで、空中ディスプレイをより安全に、より簡単に、より費用対効果の高いものにすることができる。機敏な実行力はいうまでもない。
バイデン氏勝利のためのショーを完成させるまでにわずか2週間(Verge Aeroリリース)しかなかったため、Verge AeroはStrictly FXと協同で製作を行った。花火とともにバイデン氏の選挙活動ロゴや「次期大統領」の文字、米国の地図をかたどる200 台のドローンが打ち上げられた。Verge Aeroはこのような課題に特化して作られたデザインスタジオてあり、大規模なショーを即座に簡単に実現するためプロセス全体が簡素化されている。
あるプラットフォームから別のプラットフォームへと引き渡しを行えばその分エラーリスクを増大させることになるが、その工程を排除することでオールインワンのソフトウェアセットが衝突防止計算を自動的に処理し、ヒューマンエラーにフラグを立てて修正してくれる。これにより同社のソフトウェアアプリケーションでは、決して飛行経路が交差しない(Verge Aeroブログ)。簡単にいえば、同社のドローンは衝突しないということだ。次期大統領の近くでドローンの大群を飛ばそうとしているなら、おそらく同社の製品を使うのが賢明だ。
安全検査と政府の承認を得るのは大変だっただろうが、選挙の夜に行われたプレゼンテーションは、高い適応性と完璧な実行力を見せつけた、まさにVerge Aeroがその実力を発揮できる場だったと言える(トールユッセン氏はバイデン氏のドローンショーにおけるプロセスについて我々に詳しく語ってくれることはなかったが、同社の関与についての詳細はその後、公開されている)。
この種のショーをどうやって成功させたのかについての詳細はあまり積極的に語られていないが、未来のリーダーの目の前で何百もの小さなロボットを飛ばす許可を得るためにともなうチャレンジの大きさは明白だ。高度なセキュリティを必要とし、非常に注目度の高いドローンショーの実行というプレッシャーがあっただけでなく、実行日が保証されていないという事実もあった。「私たちの仕事の多くは、まったく構造化されていない変化の激しい環境で行われることが多いため、このような困難な展開には慣れています」とトールユッセン氏は語る。バイデン氏のショーのため、特殊効果チームは火曜日から土曜日の夜まで、ほぼ1週間待機していたという。
それにしても、Verge Aeroの平均的なドローンショーでは100台のドローンをセットアップするのに2人で45分しかかからないため、バイデン氏のライトショーの準備時間は2時間未満だったと考えられる。ソフトウェアとハードウェアの密接な統合により、個々の飛行経路や開始位置を個別に設定する必要がなくなり、ショーのセットアップがより迅速に実施できるようになっている(Vimeo動画)。
各ドローンはまた、個別の飛行パターンだけでなくショーをフルコピーすることが可能だ。ソフトウェアが自動的に配置と準備状態をチェックし、ドローンを任意の開始位置に配置することができる。
「開発面において我々がここまで来るのにこれだけの時間がかかった理由は、私がいつも一緒に仕事をしているデザイナーたちが彼らの好きなように操作できるツールキットを作りたかったからです。各ドローンを素早く設定して変更を加えることができるため、進化するプロダクションのニーズに確実に対応することが可能です」とトールユッセン氏はいう。
Verge Aeroがバイデン氏のドローンショーのためにドローンを実際に飛ばしたのは受諾演説当日の夜のみだ。リハーサルが行われることはまずない。その必要があることが稀だからである。トールユッセン氏によると、同社の事前レンダリングは実際に目にするものとほとんど同じであるという。まさにデザイン版のWYSIWYG(見たままが得られる)だ。
「私は一からすべてを行い、基本原理から実際に我々がやりたいことをすべて実行するための適切なインフラを構築すると決めていました。障害物にぶつかってデザイナーのやりたいことをサポートできないということが起こらないようにするためです」とトールユッセン氏。
カスタムソフトウェアと同様、同社は独自のドローンを開発しているが、必ずしもそれは望んでそうなったことではない。「単純に我々が必要とするようなドローンが存在しなかったからです。特に通信に関しては、通信を非常に信頼性の高いものにするための技術に投資してきたため、独自のドローンを作る必要がありました」。
Verge Aeroは多くの作業を確実にこなせる製品開発に取り組み、バイデン氏の受諾演説の際には明確で見やすいデザインを見事に実現させた。
トールユッセン氏は次のように述べている。「私たちは設計上の重要なポイントを2点決めていました。私たちが重視したのはポジショニングの精度の高さと、光の出力の大きさです。この2つの条件が揃えば少ないドローンでも精度が高いショーが可能となるからです」。
同業者ではIntel(インテル)が有名だが、Verge Aeroはより軽快で実行しやすく、よりダイナミックな製品の開発に成功している。Verge Aeroの自社製品ソフトウェアと同様に、同社のX1ドローンはライトショー用に特別に製作されている。カメラは搭載されておらず、「目もくらむほど明るい」(Verge Aeroブログ)LED 光源を使用した、IntelのShooting Starのほぼ2倍のトップスピードと持続時間、風耐性を持つ製品だ。
照明ディスプレイ使用のために特化して開発されたX1は、Shooting Starより重さがあるがエンターテイメント目的のものとしては安全性が高くより優れた製品となっている。これは別に、IntelのドローンがTechCrunchのライターの頭に一度落ちてきたことがあるからいっているわけではない(未訳K記事)。
しかし、今回のショーを特別記憶に残るものにしたのは、Strictly FXとの多分野にわたるコラボレーションがあったからこそであり、これにはVerge Aeroのリーダーの今後のビジョンが表れている。
「究極をいえば、ドローンをやるだけではつまりません。同じようなことを繰り返すだけのことを私はマーチングバンドコンテンツと呼んでいますが、それだけでは時間が経つにつれて面白くなくなってしまいます。ドローンは作品を作るためのツールの1つに過ぎません。要素が多ければ多いほど魅力的なショーになるのです」。
自宅からこのショーを眺めていた3500万世帯以上の人々のみならず、バイデン次期大統領自身の嬉しそうな反応を見れば、これが真実であることは明白である。「だからこそ、その瞬間が特別なものになるのです。ショーが終わった後、私の携帯は今にも爆発しそうなほどなり続けていましたよ」。
【編集部注】著者のCarlye Wisel(カーリー・ウィゼル)氏はミッキーマウスの結婚式からパンデミック下でのジェットコースターへの乗車まで、テーマパークに関するあらゆることを取材しているテーマパークジャーナリストだ。同氏のポッドキャスト「Very Amusing with Carlye Wisel」では、ディズニーやユニバーサルなどのテーマパークリゾートで顧客体験がどのようにして生み出されているのか、知られざるストーリーや秘密を探っている。
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カテゴリー:ドローン
タグ:政治、Verge Aero
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(翻訳:Dragonfly)